ピンチをチャンスに、食肉専門店の狂牛病対策
 
1.「松坂牛+CAB コーナー増設で牛肉コーナーを拡充 肉の斉藤初音 東京都」

産直和牛の専門店 (有)斎藤音弥商店 (斎藤 旺子 代表取締役)は、昭和24年創業、首都圏に23店舗。惣菜専門店グリーンダイニング初音を3店舗展開している。
 上野センタービル 地下1階にある、松坂牛販売指定店の「肉の斉藤初音上野店(渡辺 あきら 店長)」は、11月22日に、CABコーナーを新設し改装オープンした。
 
 松坂牛、仙台和牛、那須牧場牛を中心に小売りと、場所柄飲食業者向けの店頭での卸売りが中心である。
 狂牛病騒ぎで、小売りも卸しも、牛肉・内臓肉を中心に売上が減少した。
 特に、上野店は松坂牛・仙台和牛の構成比が高かっただけに影響は大きかった。
 輸入牛肉は、業者向けに販売していたが、この騒ぎを契機に輸入牛肉の販売方法を強化する事にした。

 一般諸費者向けに、アメリカ産牛肉の幅を広げて、
  CAB (サーテイファイドアンガス・ビーフ)と、チョイスのアメリカ産牛肉。
 業者向けに
  オージービーフのショートグレインと、冷凍牛肉のスライス等の加工牛肉。
と、チルドで3種類、冷凍肉加工の商品を導入した。
  CABは、販売指定店のライセンスを取り、渡辺店長はオハイオ州ウースターのCAB本部で小売り向けの研修を収得して改装に望んだ。

 内臓肉は、豚が主力で販売量も多いので、販売している千葉健康麦豚の内臓と、通常の内臓と区分けして販売する事にした。
 また、内臓加工の「串刺し」商品や、鶏肉の加工品も対面ケース中心に展開し、接客による売り込みに心がける事にした。(渡辺 店長)

 豚肉は、「鹿児島産純粋黒豚・千葉健康麦豚・美味北総豚(通常豚)・カナダ産自然麦豚(チルド)・アメリカ差冷凍豚肉」他に、皮付きバラ・スペアリブ セントルイスカットなど、特殊な商品群も数多く揃えてオープンした。

 「販売している食肉の産地や商品特製を、狂牛病が発生する、しないにかかわらず対面販売を通じてお客様に情報を絶えず話させてもらい、店への信頼を絶対のものにすれば、今度のような事が次回起こったとしても 今回ほどの影響はもう上野店では無い様にしたいと思います。」(同 店長)


2.「顧客カード管理と、クーポン券で支持を確保 チャンピオン 大阪市」

株 チャンピオン(大阪市大正区 森川 宏光 代表取締役)は、1950年に 神戸牛の森川精肉店として創業。牛肉自由化の1990年3月に、輸入牛肉を導入し牛肉量販型の専門店に店名もチャンピオンとして、改装オープン。

 その後95年に300メーター北側に、「ライフ 大正店」が。97年西側100メーターに「オオカワ 大正店」、今年1月に、南100メーターに「エース新鮮館 千島ガーデンモール店」が新規でオープンし、既存店舗の「スーパー ナショナル・スーパーはやし・まるなか」などの、競合他社にぐるりと、囲まれる商圏になってしまった。
 客数も、90年改装までは、1日当たり100人が、改装後500人にまで伸びたが、競合の出店もあり、最近では半分近くにまで落ち込んでいる中での「狂牛病さわぎ」に直面することにった。

「千島ガーデンモールの影響で減少した客数が、やっと最近戻ってきたばかりだったので、狂牛病の騒ぎはこたえました。9月以降は、じりじり客数が減ってきましたが、安全性を店頭で毎日お客様にお話し理解を得るように努力しました。
また、牛肉の商品が現状に戻るのはたとえ1頭の牛に発病しても英国の例にならって、3年はかかると思い、思い切って、牛のアイテムを減らし、豚・鶏肉の安全性の高い、少しグレードが高いけれども美味しくて、体に良い商材を導入して、客離れを防げるようにしました。」(森川社長)

チャンピオンでは、95年ライフの大型店出店の対策としてレジで顧客管理できる「チャンピオンカード」を発行して、DMや、カード顧客に対する各種サービス、クーポン券の発行。誕生日の週での割引販売。などをコツコツ続けてきている。

今年1月の、生鮮デイスカウントスーパーの出店にさいしては、レジとパソコンでの顧客管理のシステムを一新し、新しい「チャンピオンカード」を発行し、新規の顧客の獲得に努めた。
そのかいあって、カード会員は1500名を越え、家計消費の2分の1以上の食肉を買って頂く件数が700件を超えるところまで、固定客が増加してきてきたところであった。
このカードによる日ごろの顧客管理と、毎日の接客が、競合の出現や、狂牛病騒ぎの中でも、ある程度の支持を得られた大きな要因といえる。
「商品政策として、関西でも豚肉の消費は、健康食品としての認知が高まり伸びてきているので、新しい豚肉。そして、ブロイラーと、地鶏の間くらいの品質と価格帯の商品を導入する良いきっかけになった。」(同 社長)

豚肉は、鹿児島産の黒豚と通常豚であるが、これに価格帯が通常豚に近いもので、生産者と相談して餌にハーブや竹酢や木酢を添加して臭みと余分な脂肪が少ない豚肉を開発してもらい、「健康豚」として販売できないかテストを始めている。
鶏肉は、岡山産ネッカチキンのテスト販売を始め、好評なので、来年度から定番にする予定だ。

 

 

 

「12月までは、週末には、3割・2割引きセールを続けて、年末には前年の70%を確保したい。来年の春には何とか90%まで牛肉の販売を取り戻したい。その為には、豚鶏肉の販売を強化して牛肉や内臓肉のお客さんに、もう一度安心して食べていただけるよう店頭や手配りのチラシで訴求していこうと思う。今回の騒動で毎日きて頂いているお客様に安心して食べてもらえる肉を提供していく再確認が出来てよかったと思います。」(同 社長)

3.「食肉中心の450坪のスーパーへ転換 「スーパーTERA ミートくん」をオープン 松本市」

株 テラバヤシ(寺林 和雄 代表取締役)は横浜を本社に、「元気のでる肉屋 フレシュミート」・「牛肉量販店 ミートザミート」など、食肉専門店の路面店や、食肉のカテゴリーキラーとして60店舗を首都圏・関西圏を中心に展開(年商120億円)している。
 
 「スーパーのテナントでは、自分達の思うような売り場展開ができない。そこで、自分達で肉を中心に、家庭料理で必要な魚・野菜・食品・日配を揃えてみよう。それが、従来のスーパーと違っても構わないのではないか。むしろ、スーパーではない方がこれからは、生き残りやすいのではないか?」(寺林 社長)というコンセプトで、11月2日に450坪のスーパーを改装し、肉を中心に品揃えを変えて自社でスーパーを運営するためにオープンした。

「ミートくん 松本店」の精肉には、テラバヤシグループの量販タイプの「ミートザミート(21店舗目)」が展開している。
肉のカテゴリーキラーと呼ばれるタイプの業態である。

このカテゴリーキラーの業態では、現在でも輸入肉を平気で国産表示を行なっている店舗が数多い。安さの創造のために表示違反をしているのだ。
ミートザミートは、神戸牛の産地の中心 協同組合連合兵庫県総合食肉流通センター内に、関連の牛肉供給のためのデポを設け、志方の商店街に出店し、関西に15店舗展開している。関西の出店を契機に一切の表示違反をせずに大きくなったカテゴリーキラーである。

 

 

 

「表示違反をしなかった事で、輸入牛肉が良く売れるようになり、和牛の生産地との結びつきが太くなった。和牛や豚肉の生産者との繋がりも強くなった。狂牛病騒ぎのなかでも、平日の牛肉の売上こそ半分以下になる事はあっても、週末全体の売上の減少は、牛肉を始め豚鶏肉の産直が徹底していたので、グループ全体で何とか前年並みを確保できている。」(ミートザミート デビジョン 玉木 功 部長)

 

 

 

肉の正しい表示と、消費者への取り扱い食肉のわかり易いPOP、店内のデイスプレイなどで訴求しているのが特徴で、お客様のも元気が出るようなお店にしていきたい。(同 部長)

 

 

4.「熱海の旅館卸が激減の中、店舗を改装し再出発  熱海フードセンター 」

熱海フードセンター(後藤 和己 社長)は1949年4月に「後藤精肉店」としてオープンした。
当初から、肉の小売りと、旅館卸が主体であった。

  熱海の火災でその店が全焼し、翌年の50年7月に現在の場所に移転した。
  1980年に約100坪の売り場に改装し、ヤオハンのFCとなったが、ヤオハンの倒産によりFC契約が1998年に解約となった。
  昨年12月に、81歳で現役の社長であった先代が亡くなり、専務であった現社長が会社を引き継いだ。

 

 

 

 

 

 小売りと卸で5億円あった年商も、温泉旅館の衰退と商店街の衰退で2億円まで落ち込み、社長を引き継いだものの老朽化した店舗ではどうしようもない。と考えていた所での狂牛病の出現であった。

  
小売りでは、「牛:豚:鶏の比率がが2:6:2」 旅館卸では牛肉が8くらいまで高まるので今回の狂牛病は大きく売り上げを減らすことになった。
 現在では、熱海の旅館の約半数80件に食肉卸をしている。
「旅館としても、牛肉は安い団体用の鍋には牛肉を多く入れ、その分魚介類を少なく出来るので、狂牛病で牛肉を使用できないのは旅館にとってもこのような時期大変な事になった。」(同 社長)

 そして、狂牛病騒ぎの中、11月2日に「熱海フードセンター」として、新しいコンセプトを導入し改装オープンした。

 「食肉の卸をしているので、大手のCVSの真似のような事はしたくない。価格では大手に勝てるだろうが、店作りやシステムで勝てない。そこで、商店街に買い物に来る地元のお客様や、来店客の週末に3分の1を占める都会からのマンション族の、そして熱海の旅館への卸先へ出来る店としての最大のことは何か?という事を考えて改装オープンした。」(同 社長)

 改装のポイントは
・ 店頭を活用し地場産の商品を陳列し、麦茶などの無料サービスを始めた。
・ 無農薬野菜や、地域の商品を売るための青果売り場を増やした。
・ 無添加・無農薬の食品や、健康食品のコーナーを増やした。
・ MOA牧場の無農薬牛肉や、伊豆・天城のイノシシ肉など地元商品を導入した。
 結果として、現状の売上を2倍くらいにまで伸ばす計画である。

 

 

 

店舗が活性化したことで、商店街が活気づき、 卸先の旅館が積極的に店舗内のこだわり商品に興味を持ってくれ、利用を始めてくれた。
 また、店舗のイメージを良くしたことで、外商のイメージアップが出来た事がプラスアルファーになったし、狂牛病のおかげで店の内装、商品政策のみなおしが出来た事が良かった。 (同 社長)