手間隙かけて余っている分を如何に売るかが、内臓屋。
ミートショップ とがし 川崎駅ビル店
内臓肉の専門店といえば、販売する商品のアイテムも限られ、顧客も限られ、売単価も豚の内臓主力であれば、もっと限られる。
 カテゴリーキラーの価格競争にもさらされる。
その様な中で、まして駅ビルの競合中で生き残れるのか?
 というのは、素直な疑問ではなかろうか。
 内臓肉だけでも、大手の食肉量販店や、
和牛専門店と競争ができ、まして他のテナントよりも売上・客数を伸ばしている。この事実を検証してみたい。
「競合激戦地 川崎駅ビル に出店」

 各地方で活躍していた食肉カテゴリーキラーが、集客の核として、地域を越えて大型の商業施設に出店し牛肉自由化の波と共に食肉の量販時代が1980年台後半から興った。  
川崎駅周辺には、「岡田屋モアーズ」があり、そこには「ニュークイック」が出店していた。1988年に「西武川崎」がJR駅横に出店し、福岡の「ビッグビッグ」が入店し首都圏のカテゴリーキラー同士の激突が始まった。
ニュークイックは、川崎駅の南北の駅にあたる、鶴見・蒲田駅の駅ビルに出店しており、
翌年7月に、当時駅ビルの専門店の数では最も多いと言われた「川崎駅ビル BE」にも出店した。
 この川崎駅ビルに、「ニュークイック」、高級和牛の専門店「アマイ」、惣菜のカテゴリーキラーの「ゼストクック」と共に出店したのか内臓肉の専門店「ミートショップ とがし」(有江 玲三店長)である。
 「川崎駅ビル店」は、株式会社 富樫商店(本社 川崎市追分町、富樫 将志社長)の支店として、駅ビルの請われての出店であった。
 5年前に、ニュークイックとアマイの店舗間、10坪の売り場スペース。現在の場所に移動した。
 同じフロアー内での競争も激しい中、売上は、現在も前年を越えており、「坪効率ナンバーワン」の店舗として評価されている。
 また、1日当たりの客数は300人位で、固定客を確実につかまえ、開店当初からの売上も、増加している。
 追分の本社で、処理・加工された内臓は有江店長以下4名の社員、2名のパートさんで販売されている。

「高品質・高鮮度・低価格で客数増」

豚の内臓 16アイテム(串、味付け加工を含まず)、牛の内臓10アイテム(同上)が、主力商品である。
 「狭いスペースの中では置くアイテムが限られることがネック。もっと美味しい内臓肉を陳列して食べて頂きたい。」(有江 店長)

 「豚レバー 100g 45円」は、価格も安いが、その鮮度には驚かされる。
 「豚タン・豚hツ」も、ピカピカ光っており、トリミングの処理技術などは、内臓の専門店ならでは高さを感じる。
 「生ガツ 100g 60円」は、本社の工場で、メリケン粉でモンで、機械を使って洗ってから切り込みをしており、手間ひまをかけて商品化している。
  日本人は煮込みに使うが、中国の人は、焼いて食べたりする。
「豚上ミノ100g 250円」は、「牛上ミノ100g 240円」よりも高い価格がついているが非常に評判の良い専門店ならでは、の商品。
 豚の胃袋(ガツ)の肉厚のある部分から1頭で100g位しか取れない部分で、希少価値がある。また、これは、1頭分丸ごと内臓を買って処理しているからできる商品とも言える。
 内臓ばかりでなく、最近は、「アウトサイドスカート」や、「ハンギングテンダー」などが良く売れるようになってきているとの事。
 これらも、トリミングを完璧にして食べやすいように処理しており、丁寧な商品化が顧客の信用を得ているからであろう。
 また、内臓肉は、日本人よりも、外国の人の方がおいしく食べる方法を知っているので、外人はまとめ買いが多い。(同店長)
 業者売りよりは一般客の方が多く、全体の平日は90%くらいが一般客になる。
 日本人が内臓を食べるのはこれからで、ダイエットに対する肉への評価も変わってきており、内臓肉の食べ方もこれからもっと普及する可能性があるといえる。
それだけに、これからの商売が楽しみ。(同店長)

「昭和31年創業」

創業は昭和31年。
 始めは、「もつ焼き」の専門店舗からで、芝浦市場に毎日自転車で豚の内臓を買いに行って、ボイルして刺して、1本5円で売っていた。
それから販売量も増え、仕入れが大量に出来るようになって、「モツ屋」に卸をするようになった。
昭和50年に法人にして、平成11年に本社ビルを作り、1階は売店。1階から3階までは工場。7階が本社となっている。
卸も、商品の評価が高いので、あちらこちらから、卸の依頼は多い。
しかし、現在、卸よりは小売りが主力で、これからも卸よりは小売り主体でやっていきたいと考えている。
(富樫社長)
売店も、出店の依頼が多いが、仕入れに限界があるのでなかなか応じられないのが現状で品質の良い内臓を集めにくいからだ。
 「川崎駅ビル店」は、出店にあたり、駅ビルが周辺調査をしたところ、「肉はとがし」という住民からの反響が多く、駅ビルからの出店の依頼であった。
 口コミで「とがし のモツ」は広がっていたのだ。

「豚内臓 週に900頭分を処理・販売」

原料は、横浜市場を中心に、当日屠畜の豚の内臓を丸ごと1頭分買っている。
それだけでは間に合わないので指定した屠場から仕入れをしている。
1週間で豚約900頭。牛は20頭分の内臓を購入している。
処理は、本社と屠場内で行っており、内臓を単品で扱うほうが難しいので、足の先から頭まで、全部を扱っているので、鮮度良く・安く、提供できる。
内臓は「手間を惜しんでは出来ない商売で、余っている部分を以下に販売するかが勝負で、何でも綺麗に販売することを心がけた。(同社長)
本社工場の荷受けには、大型製氷機があり、到着した内臓はすばやく氷と混ぜて工場に送るようにしている。
処理が遅いと、鮮度が落ち、味が悪くなるからで、屠場で冷却処理したものを、さらに工場ですばやく処理している。
販売出来ずに、余りそうな商品はすぐに凍結して、必要な時に解凍して販売できるようにしている。
夏に、「煮込み用」の内臓が余る場合は、最初から凍結用の処理をして大型冷凍庫にしまい、時期が来るまで保存している。

「生ばかりでなく惣菜加工を強化」

本社ビルを立てたさい、ガツなどを美味しく提供するための設備を整えた。
生の内臓の処理ばかりでなく、新しいメニュー開発で惣菜商品の加工もしている。
専属のプロの調理師と商品開発をおこないガツなどは、柔らかく食べられるように機械設備を導入し調理し提供している。
追分の本店の売店では、
・ ガツの酢味噌和え 100g 70円
・ ガツのトマト和え  100g120円
・ ガツの燻製  100g 200円
・ ガツのピリカラ味 100g 100円
・ ガツ煮 100g 170円
・ ナンコツ味付け 100g 120円
・ 豚耳味付け  100g 200円
・ 豚足味付け  100g 130円
・ 味付け肉(ミカヅキ) 100g 130円
など、新しい味を作り提供している。
 そして、これらはすべて非常に美味しく・安く、好評である。
 勿論、駅ビル店にも工場で作ったガツなどの惣菜もアイテムにかぎりは有るが提供して固定客作りに役立っている。

 路面店舗の、「追分本店」は、工場の1階部分にあり、来店客数は200人余りで、客単価は駅ビル店よりも高い。
 また、業者よりは一般のお客様が増加している。
「オープン当初は、内臓の食べ方を知らない人が多くて困りました。しかし、内臓肉をお求めになる皆さんは、必ず、駅ビルか、追分の本店を訪ねて頂けます。」
 内臓は、安くて、美味しい。また、栄養価も高く健康にも良い。という認識が徐々に広がり食べ方のレパートリーが増えることが内臓の消費の増加に密接に関係すると思います。それだけに、もっと内臓肉の良さと食べ方をアピールしたいと思うのです。(同 社長)