高鮮度でふせぐ「見切りロス減少」のための6つの原則
株 月城流通研究所
月城 聡之
 
「値引き・廃棄ロス」を減少させることは「部門利益」の向上ばかりでなく、オペレーションがスムーズになり「生産性」の向上にもつながり、最終利益の拡大に繋がる非常に重要な課題である。

 この「廃棄」の前段階で起こる「見切り」を最小限に行うには、「見切り」の瞬間を管理する以前に、精肉の場合はMD全体の構築からチェックしていく必要がある。

 「高鮮度」の牛肉・豚肉・鶏肉を販売するためには、「高鮮度」の商材を「当日生産・当日販売」で売り切ることが最適でそのために、原材料をどのように調達し、加工・流通含めて遡ってチェックし「高鮮度」状態でバックルームに納品・製造させるか、ということから考察してみる。

1.仕入れ原料の鮮度管理
 原料肉は、製造年月日が表示されず、消費期限表示のみに移行している。仕入れる原料肉は基本的に新しい方が良く、製造日から納入日までの日数をなるべく短くする必要がある。したがって、畜種、品目、取引先ごとの製造日からの納入許可日数を設定しておく必要がある。

 原料肉についている消費期限は各社によって違っている場合もあるので、現場での加工の使用目安として消費期限を決めておく必要がある。

 もちろん、期限が短いほど鮮度が良いことになる。

 輸入牛肉についても、製造日が新しいチルドビーフ(製造から4週間以内)は、ドリップも出ておらず、焼いても香ばしく食べることが出来る。もちろん、売り場での鮮紅色の維持はよく、退色がしにくい。新しいほど、「高鮮度」での販売が可能である。

 「国産豚肉」を例にとって見ると、「鹿児島・宮崎の黒豚」などは、首都圏まで持ってくる間に2日は掛かるので真空パックなどで、鮮度保持をしている。

 ボリュームゾーンの「通常豚」などは、簡易包装が多いが、屠畜後、当日は冷蔵庫にて保管。翌日に移動し、抜骨処理、スペック化し、翌朝に納品。 と言うのが現状では最短になるので、このペースでの流通・納品をするのがよい。

 屠畜・解体処理後、スペック化された商品が、当日の朝にバックルームに納品されるのが最短で、当日納品の原料を当日生産して店頭に並べるのが「高鮮度」を維持できることになる。

〈食肉の期限表示フレーム〉
原料畜種 保存温度 包装形態 原産国 品質保持期間(日)  
牛肉 0℃ 真空包装 日本 45  
      アメリカ 62  
      オーストラリア 77  
  −15℃ 包装形態不問 全ての国 24 (ヶ月)
豚肉 0℃ 簡易包装 日本 7  
    真空包装 日本 14  
      アメリカ 40  
      カナダ 40  
  −15℃ 包装形態不問 全ての国 24 (ヶ月)
鶏肉 0℃ 真空包装 日本 10  
  −15℃ 包装形態不問 全ての国 24

2.スペック化による当日生産
 トレイに盛り付けた商品はパックした時点で製造のシールを貼付しなくてはならない。

「仕越し」として、前日に生産したものは当然、先付けの「製造年月日・消費期限」は出来ないし、製造シールを貼付せずトレイのまま冷蔵庫で保管し、翌日にラベリングする事はできない。

 従って、できる限り当日生産ができるシステムを取り入れることが「見切り」をふせぐ第一歩となる。

 そのためには、朝からスライスや切り込みを始めなくては開店時に品揃えが出来なくなる。

 朝から、牛肉や豚肉の整形・トリミングを行っている時間は無いのである。

 そのために、多くの「スペック(規格肉)」が作られている。

 精肉の現場で言う「スペック」とは、スジ・脂肪を除去してあり、包装から出せば直ちにテーブルミートに加工できる状態にした原料のことを示す。


「スペック化」は作業現場での作業時間短縮ばかりでなく、不要なトリミング材が出ることをなくすことができる。

 不要なモノが現場に出ない分、作業しやすく、冷蔵庫での保管も必要が無いので、なお生産性が向上するといえる。

 また、「スペック」する牛肉・豚肉はスジ・脂肪を除去して納品するために、シッカリとした枝肉でなければならない。「スペック化」した原料は鮮度落ちしやすいので、手当てする枝肉からの選定をするために品質の良い原材料から作られることになり、「スペック」の品質は向上することになる。

 従って、SMにとっては、高鮮度を維持するための原材料のスペック化は非常に重要になる。

 夏と、冬の時期による規格の変更。特売による規格(スライス主体や手きり主体で販売する場合など)の変更もあり、きめ細かく決めることが要求される。

 豚肉のセット価格は通常「1.45」などが多いが、スペックにする分、その規格によって違うが「1.60から1.70」など、指数が高くなるがその分歩留まりがよく、作業性が良い。また、SMの現場でトリミング処理するよりは枝肉加工場での温度管理や作業のスピードなどを考慮するとスペックでの納品形態を取るのが良いと思われる。


3.消費期限等の表示
 トレイ包装されたスライスなどの食肉の「消費期限」は、「是苑国食肉公正取引協議会」から出版されている「お肉の表示ハンドブック」には、加工した食肉の原料肉・販売形態・保存温度による可食期間として
(加工日を0日と数える)
利用原料肉  販売時の形態  保存温度  可食期間
牛肉 豚肉 鶏肉
   冷蔵部分肉を原料肉とした場合     肉塊 10℃ 3日 3日 1日
4℃ 6日 6日 4日
0℃ 7日 7日 6日
スライス(*) 10℃ 3日 3日 1日
4℃ 6日 5日 4日
0℃ 7日 6日 6日
挽肉 10℃ 2日 1日 1日
4℃ 3日 3日 2日
0℃ 5日 5日 4日
   冷凍部分肉を原料肉とした場合     肉塊 10℃ 3日 3日 1日
4℃ 6日 6日 3日
0℃ 7日 6日 5日
スライス 10℃ 2日 2日 ---
4℃ 6日 5日 ---
0℃ 7日 6日 ---
挽肉 10℃ 2日 1日 1日
4℃ 3日 3日 2日
0℃ 5日 5日 4日
*鶏肉は切り身で、食鳥加工場において加工した場合
資料/(社)日本食肉加工協会をはじめとする13団体による「期限表示のための試験方法ガイドライン」より

として定められている。

 保存温度が「0℃」であれば、牛肉のスライス肉は7日間・豚肉スライスは6日間、までの「消費期限」を設けることが出来るとある。この場合、5日間以内が「消費期限」表示、それ以上が「賞味期限」表示となるが、通常SMでは、「加工日+2日間」と設定している場合が多い。

 加工日を印字せず、消費期限表示だけの場合はもう少し長く表示している場合が多い。

 消費者は、期限表示に非常に敏感で、それに対応できるだけの鮮度感を与えるために販売サイドも短く表示している場合が多い。

 それだけに、日付けが長い方の商品を販売したいために、「見切り」が速くなり、「廃棄ロス」の機会も増える。
そうならない為には幾つかの検証をしなくてはならない。

まず納品される商材の温度変化を温度計を納品業者の保冷庫内に設置し、温度変化を記録し0℃にどれだけ保てているか、を知る必要がある。

 肉中の温度が上がると、下げるのは3倍の時間が掛かると言われているからだ。

 そして、作業場の温度・ケースの温度をチェックし「消費期限」の設定を行う必要がある。

 夏と冬でも違うはずで、「Day+2」にとらわれないことである。

 何故「Day+2」に消費期限を設定したかの理由を見つけることだが、ほとんどの場合はその根拠を見つけることが出来ないと思われる。

4.オペレーションの改善・「2℃−20分の原則」 
「見切り」をせずロスを出さないための要点で、もっとも重要なことは「鮮度の保持」である。

 食肉の品温をいかに上昇指させずに商品化し販売するか、常に工夫し研究し、効率化を図ることがポイントである。

 食肉は一般的に2℃以上の温度変化(上昇)によって、ドリップの流出が促され、変色も早くなる。2℃の品温上昇は、平均して20分間の作業場放置によって起きる。したがって、「2℃−20分の原則」を念頭におき、温度管理の行き届いた作業工程を組み立てたい。

「見切り」をしないためには、当日にどれだけのパック数が販売できるかの正確な予測が必要で、閉店時に何パックの残数があるのが適切化の判断をしなくてはならない。

 そのためには、以下のような項目についてのルール化をしなくてはならない。

オペレーションガイド
現状分析  
POSデーターの分析
SKUごとの販売分析
週間の曜日別の販売管理
分類別ロスの分析
週間棚卸しによる利益分析
商品・売り場の改善  
品揃えの分析と改善
フェイス・陳列数量による鮮度管理
ゾーニング別分析と改善
オペレーション改善  
仕入れ基準の設定
仕入れ原料の鮮度管理
保管基準の設定
加工基準の設定
品出し基準の設定
SKUごとの販売数量の設定
販売許容日数による鮮度管理
見切り基準の設定
残数基準の設定

5.「見切り・値下げ」の規則
「見切り」をするのは、売り場の責任者か、もしくは責任者に委託されたものが行う。

 また、「見切り」は「現金」を捨てるのと同じであるので、「見切り」あるいは「廃棄」の金額を記録しなくてはならない。その合計を週単位で集計しながら、その週の「見切り・廃棄」の数量を減少させなくてはならない。

「見切り」をする時間帯であるが、夕方4時という場合でも、昼過ぎであってもそれは同じで、当日の閉店時の適切な残数(これからの販売個数としても同じ)から予測していく。

例えば、当日生産した翌日の午後1時に「見切り」をする。

 その時間帯は殆んどが、売り場の責任者が昼食に出る前で、そのときに「見切りシール」を持って売り場に出て、当日の販売数量を予測し、前日生産分を「見切り」する。

「高鮮度」であれば、前日生産も当日生産の商品も「高鮮度」であるので、「値引き」した商品は午後から売れていくはずである。

 当日の閉店時の残りの数量を責任者が把握している以上、午後からの生産・陳列数量を調整できるから
だ。閉店時の残数は、翌日の午前中に売れる分くらいになっているので「見切り」の数量は少なくなって
いく。

 ただ、そうして「見切り」をしてもセットモノや和牛など単価が高いために売れ残っていくものは売り
切れる割引で売り切ってしまう方がよい。

6.「見切り」商品の2次加工 
 精肉は青果・鮮魚部門と比較して「ロス」が出にくい部門と言われる。

 それは、ロスになりそうな商品を、「タレなどの味付け」・「パン粉付け」などの2次加工しやすいから
である。

 2次加工する場合、明確な「ルール」を決める必要がある。

 それは、「見切り」してしまった商品や「廃棄」にまわる商品の2次加工をしないことである。

 また、加工した商品の「消費期限」を過ぎない範囲での「消費期限」での販売である。

「Day+3」で、牛肉・豚肉の消費期限をつけていた場合は、例えば、責任者が売れ残りそうな分のパック数分を売り場から撤去し、それを2次加工用に準備する。

 そして、「味付け」など加工して「Day+2」と、その原体の商品の消費期限内での消費を表示で表すことである。 本来は「味付け加工商品」は、新しい商材から作るものであるが「高鮮度」の状態での商品で、あれば、生肉として販売できない分は、包装したパックからの加工であっても問題は無いからだ。