精肉前年割れからの処方箋

1. 昨年からの消費動向
消費が低迷し売上が伸び悩んでいる量販店が多い。
実際に消費はどのような推移を示していたのだろうか。
総務省家計調査の月次推移(二人以上の総世帯)を調査した結果、金額ベースでは肉類に関しては2009年2月から15ヶ月連続の前年割れである(表1参照)。特に牛肉に関しては、2010年5月で前年の89.2%と極めて悪化していることが伺える。

表1 家計調査 支出金額前年対比

前年対金額比 牛肉 豚肉 鶏肉 挽肉 肉類
2009年1月 97.50% 103.20% 111.20% 112.30% 102.00%
2月 86.20% 95.80% 97.30% 93.60% 93.50%
3月 97.10% 101.70% 101.20% 108.30% 99.80%
4月 92.00% 96.30% 99.60% 96.30% 95.80%
5月 101.60% 97.70% 101.70% 100.00% 99.80%
6月 97.10% 96.00% 97.70% 100.00% 96.70%
7月 93.40% 95.80% 101.80% 107.30% 97.50%
8月 100.50% 94.30% 96.90% 94.80% 96.90%
9月 97.50% 94.30% 92.90% 96.00% 95.40%
10月 98.90% 98.20% 95.60% 98.80% 98.50%
11月 94.70% 94.40% 92.60% 98.10% 95.70%
12月 99.50% 96.70% 94.30% 99.40% 99.50%
2010年1月 95.60% 95.20% 96.00% 95.10% 96.70%
2月 97.20% 95.00% 98.20% 98.80% 97.10%
3月 93.60% 93.60% 97.70% 91.80% 95.10%
4月 96.90% 95.50% 99.00% 91.70% 96.30%
5月 89.20% 95.60% 95.80% 93.50% 94.30%


どの畜種も半年以上金額ベースで前年割れを起こしているが、実際に消費された数量(重量)をみて見ると、2010年5月は天候不順ということも影響して精肉の全畜種で前年を下回っているが、牛肉に関してみてみると2009年4月から2010年4月までは100%以上で推移していることが分かる(表2参照)。
その他の畜種についても昨年から今年前半までは100%以上の消費数量の伸びがあったことが表からもわかる。

表2 家計調査 消費数量前年対比

前年対数量比 牛肉 豚肉 鶏肉 挽肉
2009年1月 95.30% 103.50% 111.00% 106.10%
2月 94.80% 98.50% 98.50% 94.80%
3月 97.00% 106.50% 104.40% 100.60%
4月 103.90% 99.10% 105.30% 98.80%
5月 105.00% 100.50% 110.80% 106.70%
6月 101.90% 100.10% 107.90% 101.80%
7月 109.70% 103.90% 114.70% 115.50%
8月 105.90% 100.00% 107.40% 107.60%
9月 103.70% 102.10% 109.00% 107.30%
10月 108.60% 105.90% 112.20% 114.80%
11月 104.90% 98.30% 106.60% 103.60%
12月 112.50% 103.80% 107.50% 107.10%
2010年1月 106.70% 102.20% 105.40% 108.60%
2月 107.70% 101.20% 109.70% 110.30%
3月 104.70% 95.40% 102.30% 98.20%
4月 101.30% 99.10% 107.00% 95.70%
5月 95.40% 98.10% 97.70% 93.10%


支出金額が前年を下回り、数量は前年並みに消費されているという実態が家計調査からつかむことが出来た。そこで、それぞれ平均単価を抽出してみると軒並み昨年よりも顕著に下落していることがわかる(表3参照)。
牛肉では2009年1月より2010年5月までに45円/100g、豚肉と鶏肉で9円/100g、挽肉で11円/100g下落している。
同期間の消費数量が「牛肉9,863g、豚肉26,294g、鶏肉19,436g、挽肉2,679g」であるので、平均単価が下落したことにより、単純に牛肉では4,438円、豚肉2,366円、鶏肉1,749円、挽肉294円分の消費金額がロスしている計算になる。

表3 家計調査 畜種別平均単価

平均単価(円/100g) 牛肉 豚肉 鶏肉 挽肉
2009年1月 316 140 99 118
2月 282 135 98 112
3月 291 131 93 112
4月 271 132 96 110
5月 290 134 92 106
6月 282 133 90 109
7月 267 133 91 107
8月 288 135 93 106
9月 268 131 88 105
10月 262 130 87 104
11月 273 131 89 108
12月 329 132 94 103
2010年1月 283 130 90 103
2月 255 127 88 100
3月 260 128 89 105
4月 260 127 89 105
5月 271 131 90 107


以上のことから、売上前年割れの原因として考えられることは、「平均単価の下落」が大きな要因であると推測される。
消費数量は前年ベースで推移しているため、購買意欲が減退したわけではないといえる。
ただ、デフレと、不況の影響下での節約志向ということは否めない。

2. 売場改善チェックリスト
売場改善の第一歩である現状把握からスタートする。
商品部の行なうMD計画の見直しと店舗運営部での現場レベルでの基礎の部分の見直しを行なう。

A:商品部の見直し事項
現状の売上低迷の根幹となるMD計画の確認を行なう。
すべてが現場の店舗の責任ではない。
そもそも商品部の計画が消費者のニーズとウォンツに見合っていたのかを見直す必要がある。
また、他店舗の取り組み成功事例が共有されていたかなど、個店毎の狭い視野でなく同じエリアで情報共有がされていたかも重要な鍵となるので、再度確認を行なっていく。

1 販売計画、販促計画の見直し チェック
長期的な販促計画から短期的な販売計画へ無理のない落とし込みが出来る計画であったか。
季節や時期に応じた販促計画が組まれていたか。
エリアごとに地域密着した販促プロモーションが可能な計画であったか。
適切な売価設定と値入設定が出来ていたか。
地域に密着したレイアウトを組んでいたか。
2 特売計画の見直し
特売計画の発注数量が適切であったか。
インストアプロモーションの企画を十分に準備していたか。
粗利益ミックスを十分考慮した企画であったか。
3 週間販売、月間販売、重点商品の見直し
期間を限定した重点商品の取り組みはメリハリをつけて出来ていたか。
重点商品が消費者にもわかりやすい売場作りが出来ていたか。
重点販売商品の成功事例を他店へ落とし込みが出来ていたか。
メニュー提案や付加価値商品への企画が出来ていたか。
販売の成功事例は他店への水平展開が出来ていたか。


B:店舗運営部の見直し事項
次に現場レベルでの問題の洗い出しが必要である。商品作りから数値管理、在庫管理が出来ていたか再度基本に戻って見直しを図っていく。また店長、チーフ、パート、アルバイトの目線を常に一定に保ち、売場管理を行っていくことが重要な鍵である。

1 定番商品の見直し チェック
決められたレイアウトに則った陳列が出来ていたか。
適正なパック数量が売場に陳列されていたか。
綺麗な商品化が出来ていたか。
鮮度は常に保たれていたか。
2 特売商品、インプロ商品の見直し
決められた値入で特売商品が目標数量販売できていたか。
インプロ商品やタイムサービス商品が適宜販売できていたか。
3 在庫、バックヤードの管理
適正な在庫内容で在庫管理が常に出来ていたか。
売れ筋商品、主力商品、戦闘アイテムの品切れが起きないように管理されていたか。
バックヤードの整理整頓が出来ていたか。
冷蔵庫、冷凍庫の日付管理、鮮度管理が隅々まで行き届いていたか。
4 数値達成状況の確認
年間、月間の売上、粗利、ロス、在庫などが適切に管理されていたか。
日々の売上を毎日把握して、目標未達成時には適切な対応がとられていたか。
時間帯別売上を意識した製造計画が出来ていたか。
人事生産性を高める工夫を行ない、数値管理をしていたか。
5 問題点のフィードバック
現状の問題点や悩みを店長や商品部に相談していたか。
他店舗の問題点を自店へ置き換えて、問題意識を持った売場作りが出来ていたか。
クレーム処理が適切であったか。
6 従業員教育の見直し
バイヤー、SV、店長、チーフ、パート、アルバイトの目線が常に同じ方向を向いていたか。
顧客満足度の高い接客販売が出来ていたか。
商品知識、食べ方提案など販売知識が豊富に勉強しているか。
商品情報、特売情報、成功事例、販促方法など現場で実践されていたか。

3. 売場前年割れの処方箋
まず、現状の数字を徹底的に分析するとことから「てこ入れ」を行なう。
消費者のニーズに合ったものと、全くマッチしなかったものを分別する。
@ABC分析で絞り込み
まずPOSデータをABC分析して、売れ筋と死に筋を把握する。
「あれも」「これも」ではなく、絞り込んだマーチャンダイジングで確実にニーズを捉えた品揃えを大切にしていく。絞込みを行なうことで、売れ筋商品の単品大量販売が可能となり、売場にメリハリが出る。
「死に筋アイテム」を確認することで無駄なロスを撲滅させることも可能となる。
Aロスの徹底分析
低価格戦略で売上が伸び悩み、さらにロスまでも多く発生すると、数字が作れなくなってしまう。
POSデータからロスがどの商品から何時に何パック発生しているのかまで把握して、無駄なロスを出さないように管理する。
Bブランド商品再構築
価格破壊をしてしまったカテゴリに関しては、値上げ要請には消費者は答えてくれない。
しかし、同じ価格で今後も継続して販売していけば売上UPにはつながることは無い。
低価格商材を「戦闘アイテム」としながら、再度定番商品となる商品を売り込みなおす。
単なるブランド商品ではなく、「飼料や効能、銘柄」等の打ち出しがしっかりと謳える「銘柄肉」を基幹商品として販売することで売場の活性化を図る。
高級銘柄ブランドばかりでなく、大衆的に販売できるブランドの再構築を行う

C超地域密着戦略
都市型と郊外型の店舗では大きく売場作り、商品作りが変わるので、地域密着を徹底的に攻略する。
SM店舗では徒歩10分圏内(半径500m)の一次商圏のシェア率100%を目指して確実に売上をUPさせる。年齢別人員構成比、世帯人数、男女比率、子供・老人世帯などを把握して、地域に見合った商品展開を行なう。  
全国平均でも単身世帯は3割いるにも関わらず、売場の単身世帯用の商品開発はほとんどされていないことも、売上が伸び悩んでいる原因の一つであるといえる。
Dコンセプトの明確化
今後、厳しい経済環境がまだまだ続く。「単身世帯」「中高年」なども今後の大きなテーマとなる。
今まで以上に見やすく買いやすい売場であり、かゆい所に手が届くようなサービスが量販店には求められてくるので、簡便食材の充実やメニュー提案と開発を行なう必要がある。
E強化カテゴリを明確にする
 販売強化するカテゴリの打ち出しを明確化する。アイテムではなく、カテゴリで攻める。
 「ミンチ」・「味付け焼肉」・「ブロック」など、単品ではなくのカテゴリとして売り込み買い上げ点数アップを中心に展開を強化する。
ミンチ類は、高品質・低価格を打ち出しやすい。


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