1.ニーズとウォンツのずれが生む、予算と売上のずれ
店にとって店舗に来店されるお客様が商品を買ってようやく売上になる。
来店されるお客様のほとんどが近隣の地域に住むお客様であるため、それぞれの店舗のお客様に合わせた売り方や量目設定などが売り上げに左右する。
チェーン展開している量販店でも、立地が一戸建て高級住宅の多い地域と公団住宅が多い地域では売れるものも違えば、買う量もグレードも違う。
都市部の駅前店舗と地方店舗では客層も違えば、ピーク時間や売れる商品も違う。
個店ベースでの対応でいかに売り上げを上げることが出来るかを考えていく。
●お客様の求めているもの
今、売場に陳列された商品が来店されたお客様にとって本当に“必要としている商品なのか”、“欲しい商品なのか”を考えて売場作りを行っているだろうか?
おそらく、定番の基本レイアウトに沿って陳列し、本部バイヤーの作成した広告や特売を中心に売場を構成していることがほとんどであると思う。
日々変化する気温の変化は、広告や特売スケジュールでは対応できない部分であるので、この細かな調整は個店で修正していかなければならない。
また、大きな量販店になればなるほど、地域性が欠落した売場作りになってしまっていないだろうか?
チェーン展開している企業にとっては、より効率的な発注や集中管理された商品アイテムで効率を図るあまり、個店での自由度がかなり少なくなっていることも現実であると思う。
しかし、地域に密着した毎日買いに来るお客様にとっての細かなサービスは、各店で違ったものであり、本部で一括に調節できるものではない。
お客様の「今の気持ち=食べたいもの」を大切にした売場作りを、現場レベルでより細かに考えていく必要がある。
●予算と売上の差が拡大
昨今の景気の悪さから、予算と売上の差が拡大し前年超えをすることが、以前の様に容易ではなくなっている。
もちろん消費自体が鈍いということも否めないが、お客様の懐事情や欲しいものが売場にないということも一つの原因と考えられる。
欲しい商品がない → 買わない → 売上にならない → 予算未達成
この構図が予算未達成の原因と考えられる。
では、『お客様が欲しい商品』とはどんな商品であるか。
2. 地域密着型外部要因克服対策
(1)地域や立地によるプロモーション
都市部と地方都市、駅前とルーラルでは客層はどのように違うのかを簡単に表にした。
表を見ると都心部や駅前立地の客層と地方や田舎(ルーラル)の客層について、来店手段や家族構成が違うため、購入する商品も違っていることがわかる。
来店する顧客の満足度を高めるということを考えると、個店独自の商品構成や売場作りをしなくてはならない。
表:立地による客層の違い
| 立地 |
A:都心部・駅前 |
B:地方都市・ルーラル |
| 来店手段 |
電車、徒歩 |
自家用車 |
| 家族構成 |
単身(独身者)、2人世帯が多い |
単身(高齢者)と4人以上世帯の比率が高い |
| 平均年齢 |
低い |
高い |
| お昼のピーク |
精肉は売れにくい |
11時頃〜焼きそば用小間切れなど売れる |
| 夕方のピーク |
18時頃から会社帰りに電車で来店 小中パックが中心に売れる |
17時頃から車で来店
大中パックが中心に売れる |
| 買い物時間 |
5分〜10分 |
20分〜30分 |
| 料理方法 |
簡便商品を中心に時短料理中心 |
比較的手の込んだ料理(独自の味付け) |
| 購入のポイント |
少量で必要な分だけ購入 |
大容量パックのお買い得品に注目 |
A:都心部、駅前立地のプロモーション
【考え方】会社帰りの少数世帯層をターゲットに、必要なものを徒歩で持って帰れるだけの量を販売。
簡便性の高いメニュー、
話題性の高いメニュー、
簡単においしく食べる事のできるメニュー提案
で顧客満足度を上げる
【ピーク時間帯】18時〜22時:電車で会社帰りに来店し、比較的ピーク時間は長い
【売り込み商材】単身もしくは2人世帯分程度の少量パックが主
(1)女性客はお弁当にも入れることのできる簡便性の高い商品、味付け商材

カナダ産豚ロース生姜焼用(280g280円)

国産豚ロース香草焼用(180g380円)
(2)男性客には夕食の一品や、生食のおつまみ商材

国産牛モモたたき(生食用)(80g380円)

豪州産牛ローストビーフ(生食用)(70g380円)
(3)複数パック買わなくてもよい簡便キット商材

銘柄鶏鍋セット(1P580円)
B:地方都市、ルーラルの立地のプロモーション
【考え方】車で来店する主婦(4人以上のファミリー)をターゲットに、ボリューム感とお買い得感を兼ね備えた商品展開を行う。
簡便性の高いものよりも、より食材や素材としての位置づけの商品で顧客満足度を上げる。
【ピーク時間帯】夕方17時〜19時:車で会社帰りの女性や主婦が来店し、ピークは短い
【売り込み商材】3〜4人家族〜2世帯6人〜8人分の大容量パックを中心に販売
ボリューム感があり安価な食材が売れやすい。

米国産牛肩ロースステーキ(600g880円)
(2)天候や気候によるプロモーション
A:大きな天候不順(台風、大雪、大雨)
台風や大雪などの場合は買い物に出ることが困難になる。
特にルーラルの場合、道路が寸断されて家が陸の孤島となることもあるので、事前に大容量パックお買い得セールを行い、商品の買いだめを喚起する。
【台風】3〜4日前にはある程度予測が可能。台風の影響で道路が寸断されたり、物流のトラックが高速道路を利用できないなど、物理的理由で商品が入荷できない可能性がある。
対策:台風が来る前日までに、冷蔵庫原料在庫を2日分増やす。
【大雨・大雪】1週間前の週間天気予報で警戒し、2〜3日前で突発的な大雨や大雪を除いて予測可能。物流のトラックが高速道路を利用できなくなったり、道路状況での大幅な遅延で商品の入荷が遅れることが予想される。
対策:大雨・大雪が降ると予想される日の前日までに、冷蔵庫在庫を2日分増やす。
【売り込み商材】牛肉及び豚肉の小間切れ、切り落としの大容量パック(800g〜1sパック)。また、量販店側にとってもキーリングが長く、バキュームパックになっている輸入豚ロースや肩ロースの、切り落とし、とんかつ用の大容量パックを売り込む。もし、天候不順が軽度であった場合でも、輸入豚肉は通常商品として継続して販売可能である。

米国産豚ロースとんかつ・ソテー用(80g×8枚680円)
B:雨天や急激な気温の変化に対応したプロモーション
(1) 雨天
近年急増している突発的な集中豪雨であるが、こちらに関しては予め事前準備をすることが出来ない。しかし、春と秋の長雨の場合は、雨の状況にあわせて『雨の日お買い得セール』『雨の日特価』などのウェザープロモーションを行うと、“雨が降ったらお買い得!”だから買い物に行こう!という消費者心理を突いた、プロモーションを行うとよい。
【売り込み商材】単品大量販売で価格(100g単価)を打ち出した販売方法で売り込む。
さっぱりとしたメニューが食べたくなるので、豚肉を使用した冷しゃぶ・蒸ししゃぶ用切り落としがよい。

国産豚ロース・バラ冷しゃぶ用セット(200g380円)
割引セールはレジで一括制御の設定や、レジの変更がない場合でも商品リパックが必要であるたり、また利益の面でも本部バイヤーとの調整が困難になるため好ましくない。
(2)急激な気温の変化
ある程度の予測は天気予報で可能であるため、メニュー提案を事前に考えておきプロモーションをかけていくとよい。
【急激な暑さ】熱くなるとビールと焼肉が食べたくなる。
焼き肉需要を喚起する提案や焼肉セットの準備を行っておく。
また、夕食は簡便性の高いメニューが好まれるため、味付け商材や簡便メニューの売り上げが上がる。
【急激な寒さ】寒くなると途端にホットメニューが食べたくなる。特に鶏肉モモ切身なべ物用、豚しゃぶしゃぶ用の需要が高く、いずれの商品も売り上げに大きく貢献する。
また、寒い時期には特に辛いものも注目されている。近年は激辛がブームであり、キムチ鍋や火鍋も注目のメニューとなっている。
3. 本部MDと商圏の特性との食い違い
本来、商圏や店舗によって販売方法は全く違うはずであるが、効率化を図るためにエリアや全店でのMDを行っているのが現状である。
あくまで、本部MDは全店もしくはエリアとして7割のお客様の満足度が得られると売上高を伸ばすことが出来るため、残りの3割はターゲットにはしていない。
個店ベースでは、すべてのお客様に満足していただく売場作りをし、顧客満足度を高める工夫と売り方をしなくてはならない。
各店に来店される顧客の客層や家族構成は店舗でしか把握できない極めて重要な要素であるため、本部MDの用意した量目設定では地域に見合った量目でない場合も出てくる。
この場合、本部に確認し各店で売れる量目に変更して、売り上げにつながるような売り方をしなくてはならない。
米国産豚ロースしゃぶしゃぶ用が広告の場合
| 商品名 |
量目 |
売価 |
100g単価 |
特売 |
| 米国産豚ロースしゃぶしゃぶ用 |
800g |
980円 |
123円/100g |
インプロ |
| 米国産豚ロースしゃぶしゃぶ用 |
450g |
580円 |
129円/100g |
インプロ |
| 米国産豚ロースしゃぶしゃぶ用 |
280g |
380円 |
136円/100g |
広告の品 |
| 米国産豚ロースしゃぶしゃぶ用 |
206g |
280円 |
136円/100g |
インプロ |
| 米国産豚ロースしゃぶしゃぶ用 |
100g |
136円 |
136円/100g |
インプロ |
例えば、米国産豚ロースしゃぶしゃぶ用が280g380円(100gあたり136円)で広告に入っていた場合(よりどりセールは除く)、地方では家族が多いため280gでは内容量が少ないので、より多い800gや450gの商品を製造して、お客様に買いやすい売場作りをしなくてはならない。一方、都心部や駅中スーパーでは単身世帯などが多いため、280gでは量が多く売れにくい。こちらの場合は、逆に量目を減らした商品やユニット売価(100g売り)で商品を構成すると、お客様にとって買いやすい商品化となる。
いずれにしても、バイヤーとの調整が必要な事項ではあるが、店舗によって売れる量目や売価帯が違うので、すべて本部MDで売場作りをすれば売り上げが取れるというわけではないということを認識しておかなくてはならない。
(食品商業3月号より)
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