儲かる豚肉の品揃えと販売戦略 (フリーデンの売り方提案)
厚切り増やしたバラエティ豊かな売り場で提案強化を

豚肉は「精肉部門の稼ぎ頭」精肉部門の粗利益確保に最重要

農場から流通までの一貫生産で定評のある「やまと豚」のフリーデン。昨年7月から、同社販売促進部長・百井大治氏の「儲
かる豚肉の販売対策」シリーズを好評裡に連載しているが、今号では、同社恒例のスーパーマーケット・トレードショー出展
に合わせ、その第3弾として百井大治氏に「儲かる豚肉の品揃えと販売戦略」を聞いた。

悪い環境を打破して原点回帰細かい商品づくりで売り場再編

--今回は、スーパーマーケットにおける豚肉のこれからの品揃えをテーマにお聞きしたいと思います。

百井 これまでスーパーマーケット・トレードショーではいろいろな部位で厚切りポークステーキの提案をし続けてきました
。豚テキのソースも販売してきました。しかしながら依然として、スライス中心の品ぞろえをしている売り場が多いように思
います。

--スライス中心の品揃えでは、魅力のある売り場はできないと思うのですが、なぜスライスしかない品揃えになっているので
しょうか……。

百井 原因の一つはチェーンストアが肉をインストアで加工する店舗が少なくなってきていることです。センター加工のため
にセンターを効率的に稼働させることが優先されるためにどうしてもスライスが多くなってしまい、我々が提案しているアイ
テムを導入できる環境にないのではないかと思います。
品揃えを豊富にして、肉の提案をしていくよりも、センター効率優先の品揃えの売り場になっているのではないでしょうか
。センター化しているから、細かい品揃えができないということかもしれないですが、逆にセンター化をすることによって幅
広い品ぞろえがしやすいはずなのですが。センター経由だと少数多品種ではなく、絞り込んで単品集中販売という商品供給を
せざるを得ない事情で、我々の「細かい商品づくりで品揃えを豊富に」という提案が受け入れにくい環境にあるのではないか
と思います。インストア加工で細かい商品化をして品揃えするにしても、技術的な問題と同時に効率の問題があるということ
なのでしょう。

今回の提案の目玉は「プルコギ」「味付け肉」の利益確保に貢献

--今、提案することは……。

百井 商品づくりを大別すると、スライスと手切りにわけられます。具体的には、包丁で切ったステーキ、豚カツ用や焼き肉
用の手切りの切り身肉とスライサーで切ったスライス、切り落とし、小間切れ、しゃぶしゃぶ用やすき焼き用など薄切り肉に
わけられるということです。今の売り場はスライス肉が多いのが現状です。
スライス肉を売る事も大事なのですが、スライス肉を部位別に品揃えして売っているだけでは妙味がないので、今回はスラ
イス肉を利用した味付け肉「プルコギ」を提案します。スライス肉を味付けして焼き肉用で売ろうというご提案です。我々は
以前から内臓肉を含めた味付け肉のコーナーを提案していますが、毎日のキチッと品揃えした味付け肉のコーナーを展開して
売上を確保している店はまだまだ少ないようです。
今回提案する味付け肉の「プルコギ」を中心に、従来の味付けの焼き肉用や生姜焼きや味噌漬け等を品揃えして、コンシュ
ーマーの味付けの肉と併せて、コーナー展開を提案していこうと思います。味付け肉と内臓肉をバラエティーミートのコーナ
ーとしてまとめてコーナー展開を提案してきたのですが、どうしても内臓肉中心だけだと単価が上がらなくて効率が悪いとい
うことでコーナーの維持ができないようです。利益率は高いのですけど、単価が低いために売り上げが上がらず、スペース生
産性が低いということが課題でした。味付け肉コーナーを活性化し、売上金額を稼げるコーナーにならないかということで、
今回の「プルコギ」の提案です。味付け肉の「プルコギ」は某企業では試食させて凄まじい勢いで売っています。1店舗で1日
約1トン売られているというのです。我々は豚肉での提案ですので、タレは美味しくてコストが肉より高くなるという条件で
開発してまいりましたが、やっとこのトレードショーで提案できるようになりました。是非、試食販売で導入していただき、
定番で毎日販売していただきたいと思います。売上げ、利益、味付け肉コーナーの活性化にかなあズ貢献できると思います。
またセットでの有利な仕入れも残パーツの利用で実現しやすくなるのではないでしょうか。

精肉構成比の高い店の違いは品揃えの豊富さが第一

--精肉構成比の問題ですが、昔は15%が基準と言われた精肉構成比が、今は10%だということですが、品揃えに問題があるので
すか。

百井 惣菜部門の強化が進み、精肉売り上げが惣菜に移行した部分が大きいということは確かにあるとは思います。しかし、
精肉部門として対応がきちんとできているかが問題ではないのでしょうか。弊社のお客様で精肉の構成比が20%前後と極端に
高い店舗がいくつかありますが、一般のスーパーマーケットと極端に違う処は品揃えです。
牛豚鶏のバランスもありますが、商品構成と品揃えをもう一度考え直す必要があると思います。
アメリカでのBSE発生以降、USビーフの輸入量が激減しました。現在20ヶ月の月齢までしか輸入できません。これはアメリ
カの牛肉生産量の15%しか対象にならないためです。しかし、今年7月から30ヵ月になるということで、輸入量が一気に増える
事が予想されます。当然コストも下がります。その先はTPPでさらに値段が下がることになりますが、現在日本人1人当たり
の肉の消費量は2001年のピーク時の7.7kgより2kg減です。輸入制限の月齢が20ヶ月から30ヵ月になると約5倍の供給量になり
、牛肉の輸入量が01年の実績にまで回復すると消費量は1人当たり約2kg増える事になると予想されます。前述の28.5kgが
30.5kgになるのか、高年齢化社会での肉全体の消費量が増えず、28.5kgのまま牛肉が2kg増えた場合どうなるのでしょうか。
鶏肉はインフルエンザなどいろいろな事件がありましたが、消費量は安定しています。鶏肉に変動がないということは、牛肉
が増えた分豚肉が減るのかというところが問題だとおもいます。

BSEの牛肉ダウン救った豚肉店の相乗積確保へ豚肉強化を

--将来のTPPも含め、豚肉への影響が大きい訳ですか。

百井 時代背景として少子高年齢化で肉全体の消費量は増え続けることは期待できないでしょう。スーパーマーケットはBSEで牛が売れない時、豚のスペースを広げて豚肉と鶏肉で売り上げをカバーしました。結果、牛肉の売り上げはなくなり、精肉全体の売り上げは落ちましたが、粗利益の額はカバーできたという企業が多かったようです。
今でも豚肉はスーパーマーケットの精肉部門の稼ぎ頭です。粗利益額を一番稼ぐ商品ということです。それが少なくなって牛肉が増えるとどうなるかということです。豚肉から形状される利益を維持するためには、豚肉をキチッと品揃えして売り場を展開しないと、精肉部門の粗利益額が減ってしまうのではないかということです。
スーパーマーケットとしても、店全体の相乗積を落とすことになるので、この天を真剣に考えるべきではないかと思います。養豚技術の向上から、柔らかく美味しい豚肉がたくさん清算されており、昔と比べると品質は数段しんぴしています。
牛肉のステーキと同じように、「銘柄豚の厚切りステーキは美味しい」ということをぜひ提案していただきたい。今年7月からUSビーフが一気に入ってきますが、BSE発生以来、特に輸入量の減少下部位はステーキ商材でした。7月という時期も重なり、当然焼肉、バーベキュー、ステーキの販売が休暇されることになるでしょう。その時に、豚肉のステーキやバーベキューを併せて提案していただければと思います。

2月中旬は春夏型変更の時期バーベキュー対策も重要課題

--さて、スーパーはどこから切り替えると、売り場が大きく変わっていくのでしょうか。

百井 今はまだ鍋の時期ですが、2月中旬には、焼肉、バーベキューの品揃えを増やして春夏型の売り場づくりに変更の時期です。ポイントはバーベキューだと思います。バーベキューでは、ステーキやハンバーグ(グラインドミートステーキ)とポークチャップやスペアリブです。アメリカでは家庭の庭でバーベキューをする頻度が多いようですが、日本の住宅事情ではそうはいきません。
しかし、最近は、花見やゴールデンウィーク、お盆などの連休にアウトドアでバーベキューが多いようです。バーベキュー用の墨や器具までよく売れており、ちょっとしたバーベキューブームです。この時期には、スーパーでも大型パックのバーべキューセットや味付け肉がよく売れています。バーベキューではポークチャップ、鶏の骨付きモモやスペアリブ、内臓など意外と安価な商品が美味しく食べられます。
そのため、ボリュームパックでの値頃な販売がしやすく、よく売れていると思います。大型連休だけれなく週末にも是非、バーベキューの提案をしていただきたいものです。その美味しさが分かると、ポークステーキやスペアリブは家庭でも焼けますから、通常の定番商品としても、もっと拡販できるアイテムとして定着できる商品になると思います。通常から定番商品として品揃えを是非していただきたいと思います。

SMはシーン想定の売り方を商品づくで季節感を出そう

--スーパーマーケットに欠けているのはその辺の対応ですね。

百井 確かに炭やバーベキューの道具が非常に売れているのですが、精肉売り場ではそれに対応した「アウトドアでバーベキューをやるのにこれがお値打ちで美味しい」という提案がまだまだ少ない気がいたします。「厚切りのステーキを訴求してください」とご提案してきましたが、どんなシーンで消費されるか、そのニーズはゴールデンウィークやお盆休みなどのアウトドアシーズンだけではないのです。「普段から品揃えをしてメニュー提案してください」ということです。
スーパーマーケットも各シーンを想定した売り方をしていかないといけないと思います。生肉の売り場は青果や鮮魚部門のように商品自体に季節感がないので品揃えや商品づくりで季節感を出す必要があります。クリスマスはチキンとオードブル、暮れは和牛のすき焼きとしゃぶしゃぶを売り込んでいけばよいのですが、今年の春夏型の売り場は、バーベキュー商材と味付け肉「プルコギ」でダイナミックに展開していただけたら、と思います。

年中同じ原材料を扱う精肉は同じ部位も違う食べ方提案を

--奥が深いですね……。

百井 また、最近は料理本がよく売れているのですが、これはいろいろなメニューを作っていこうという意欲の表れだと思います。ですから、いろいろなメニューに対応ができる材料が品揃えできていることが大事ではないでしょうか。特に用途別にカットされたブロック肉は品揃えしてなければなりません。年中同じ原料を取り扱う精肉部門は、季節によって、同じ部位や商品でも違う食べ方を提案する必要があります。
季節に合ったメニュー提案ということになるのですが、同時に商品化技術も要求されます。なかなか難しい問題です。最近は、テレビでも料理番組だけでなく料理提案のコーナーが多くなりました。人気番組で紹介されたメニューの材料は驚くほどよく売れます。きちんと品揃えして対応していきたいものです。
外食のメニューにも注意しなければなりません。モツ鍋ブームでホルモンが売れ、今では精肉部門の通年での売れ筋No.1アイテムのしゃぶしゃぶも外食産業のメニュー採用からです。「あそこで食べたらおいしかったから家で作ってみよう」というようなニーズに対応できる品揃えを売り場で実現していきたいものです。

SMのやっていけないことは「外れの商品」を売らない事

--「やまと豚とその他の国産豚との違い」ということについて……。

百井 生き物ですから、どうしても個体差はあります。通常の国産豚とやまと豚を食べ比べてみると、「やまと豚のほうがおいしい」というのは普通なのですが、非常にいい国産豚とあまり脂が乗っていないやまと豚を食べ比べるとどうかという話になると、やまと豚はそれでも臭いがしないし、固くないので味の評価が大きく下がる事はありません。美味しい餌と水と、飼育環境、やわらかい肉質と肉量の多さは血統のコントロールに裏付けされたものです。
厚切りの肉なら、赤身まで軟らかく提供できる、やまと豚がお勧めだと思います。
スーパーマーケットが最もやってはいけないことは、「外れを売る」事だと思います。例えば「硬かった、臭かった」ということです。獣臭の強い豚を1頭販売したとします。1頭が50kgですから内容量200g平均で販売すると販売パック数は250パックになります。1頭混ざっているだけで、200人のお客様が口にするのです。細切れで他の肉と混ざるともっと販売数は増えると可能性がありますし、挽肉に混ざると大変なことになります。そういう肉を絶対に販売しないことが、お店の信頼には重要なことです。産地や生産者、銘柄の選定など、仕入れには十分な注意が必要です。やまと豚のような安心して販売できる肉を扱うことを心掛けて下さい。


 
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