牛・豚肉相場高騰での「鶏肉需給」最前線

牛豚の疾病・相場高で変動する鶏肉相場

鶏肉相場は、「モモ肉」と「ムネ肉(テバ肉)」の部分肉の加重平均価格で相場を判断する。
モモ肉と、ムネ肉を合計した金額を見れば、相場の変遷が分かり易いので、表の右端に合計を書き込んでみた。

通常、モモ肉ムネ肉の合計が850円から900円位であれば、生産者は利益が出ると言われる。

この近年の加重合計を見ると 平成7年(1995年) 英国でBSEが発生し、世界的に牛肉消費が低迷するきっかけになった。

平成8年(1996年)に、大阪・堺市で牛が原因で発生する「0ー157」によって、牛肉消費が低迷すると、豚肉と鶏肉の相場が上昇し、モモ肉とムネ肉の加重平均も943円と高値を付けた。
平成9年に、台湾で「口蹄疫」が発生し、台湾からの豚肉が輸入禁止になり、テーブルミートとして定着し始めていたチルドポークが輸入されなくなり、国内の豚肉と鶏肉相場が高値で安定した。
平成12年(2000年)には、チルドポークの、台湾に代わる産地として定着し始めた韓国で 「口蹄疫」が発生し、豚肉の輸入がストップした。国内の豚肉と鶏肉相場は、再び上昇し始めた。  
平成13年には、9月10日、日本でも初めて牛に「BSE]が発生し、豚肉と鶏肉の相場が上昇した。  
平成20年(2008年)には、宮崎県で「鳥インフルエンザ」が発生し、多くの鶏が殺処分になった。その結果、年間のモモ肉とムネ肉の加重相場がプラスすると1012円という結果になった。  
また、平成22年には、宮崎県で牛の「口蹄疫」が発生し、牛肉の代替として、豚肉と鶏肉の相場が高騰した。
 
従って、鶏肉の高値の相場は、鶏の疾病である「鳥インフルエンザ」よりも、牛・豚の疾病による、食肉の代替需要としての影響が大きいことが分かる。  
牛肉の疾病により、豚肉と鶏肉の需要が高まる。  
牛の「0-157」や「口蹄疫」・「BSE]から、消費が回復し、消費量が増え、相場が回復し、高くなると、安い豚肉に消費がシフトし、豚肉の相場が高くなると、安い「鶏肉」の需要が高まる。  
鶏モモ肉の需要が高まり、相場が高くなると「ムネ肉」に需要がシフトすることになる。

表① 鶏モモ肉とムネ肉の相場推移

鶏肉 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 年間平均 モモムネ
06モモ 582 551 557 577 579 512 490 511 519 536 528 601 538 849
  テバ 335 298 294 309 319 31 323 334 328 327 314 328 311
07モモ 582 510 515 546 526 464 462 489 502 560 563 636 556 829
  テバ 313 259 263 297 273 233 239 264 274 305 282 286 273
08モモ 675 649 605 585 605 581 556 567 613 645 665 715 623 943
  テバ 287 266 266 288 309 324 354 354 335 311 313 345 320
09モモ 682 632 635 615 577 510 457 454 484 547 603 680 569 850
  テバ 320 289 296 316 321 303 285 284 282 264 275 283 281
10モモ 678 621 606 621 613 566 531 548 596 670 675 672 626 900
  テバ 272 245 245 251 251 254 276 278 275 290 292 298 274
11モモ 692 656 655 648 652 614 566 539 524 575 609 648 603 832
  テバ 291 269 264 256 258 250 247 241 236 218 210 212 229
12モモ 652 603 610 623 633 584 551 545 569 646 638 658 620 820
  テバ 212 204 199 200 200 194 195 195 198 206 197 209 200
13モモ 702 673 621 563 541 503 510 530 571 666 732 752 620 896
  テバ 216 196 197 212 227 255 266 270 277 287 307 331 276
14モモ 737 687 650 640 648 630 616 620 635 649 664 714 657 875
  テバ 323 291 263 248 238 238 216 213 207 206 206 220 218
15モモ 734 690 644 594 552 524 491 502 551 626 636 657 587 810
  テバ 224 210 195 184 192 212 225 233 224 216 210 230 223
16モモ 645 559 474 476 540 587 586 540 542 598 596 663 568 797
  テバ 205 230 226 200 194 193 225 248 245 239 234 243 229
17モモ 655 632 629 593 585 565 538 517 533 564 596 611 568 797
  テバ 218 214 224 217 223 218 228 235 226 231 238 248 229
18モモ 619 599 558 541 525 494 510 520 534 578 593 638 573 789
  テバ 234 233 220 211 204 192 205 215 217 228 229 234 216
19モモ 666 651 630 629 629 603 589 563 566 615 670 720 651 912
  テバ 230 215 213 209 211 211 218 240 250 270 290 307 261
20モモ 746 731 745 745 749 740 738 721 705 694 672 657 688 1012
  テバ 312 308 311 316 329 342 369 368 357 358 348 339 333
21モモ 659 608 571 564 583 587 583 582 592 610 625 651 617 828
  テバ 333 285 251 231 225 214 211 211 207 205 209 211 211
22モモ 674 677 677 667 652 629 580 541 544 575 622 662 632 882
  テバ 210 201 197 200 206 227 244 250 255 252 260 275 250
23モモ 707 705 698 700 696 659 625 595 599 614 607 602 627 873
  テバ 279 276 273 277 279 266 272 273 270 261 249 232 246
24モモ 627 609 594 578 572 564 555 533 518 537 573 611 575 772
  テバ 208 190 179 172 171 175 177 176 182 202 227 235 197
25モモ 642 622 596 574 567 544 534 540 577 615 646 690 612 877
  テバ 222 210 215 222 231 264 276 284 282 277 270 268 265
26モモ 710 682 662 628                 671 940
  テバ 265 268 271 271                 269

資料:農水省「ブロイラー卸売価格」、「食鳥市況情報」
 注:価格は消費税を含まない。

国産・輸入ポークの価格高騰と今後の相場

今年の、鶏肉相場は、世界的な飼料用穀物価格の上昇が、相場を押し上げ、中国やロシア、インドなどの食肉消費の伸びで、供給がタイトになっている。

そこに、昨年から米国で始まった「PED(豚流行性下痢)」による、ウィルス感染で、4月までに米国で、400万頭の豚が死亡し、豚肉の供給不足となっている。

また、ポーランドやEU東欧諸国におけるアフリカ豚コレラ(ASF)の余波で、ロシアが、カナダに買いに入ったことなどがあり、北米の豚肉価格が高騰している。

高値が続く米国の豚肉の価格は、3月第一週に100ポンド当たり111.99ドルと最高値を更新した。季節的に、年間で最も安値となるこの時期に、前年を43%も上回る最高値が出現した。

表② 米国の2009年1月以降の豚肉価格の月間の平均価格の推移


出典: IMF - Primary Commodity Prices

表②は、100ポンド当たりの豚肉価格を為替を加味して「円」で示したものだが、今年に入り、価格が急上昇していることが分かる。
日本でも、5月20日現在で、東日本はほぼ全域に、PEDが発生し、日本での感染豚は8万頭に達している。PEDによる国産豚の出荷減少は、6月から本格化する見通しで、需要期を迎える6月以降、豚枝肉相場は高騰すると思われる。
全国指標となる、東京食肉市場の枝肉相場は、5月連休前から、価格が高止まりしている。大型連休前の23日に1Kg728円(上物平均)と、同時期の最高値を付け、その後は660円と前年同時期に比べて32%も高い。
5月に入っても、全国的な「PED」の防疫対策で、出荷を控える農家が増えたことと、輸入チルドポークの4・5・6月生産の価格急騰を受けて、国産豚肉にシフトしたことが要因と考えられる。
今後も、通常よりは3割位の高値が予想されており、「PED」による、出荷頭数の減少は、現在子豚が多く死亡しているので、10,11月の出荷頭数も減少するとみられており、年内、相場に大きな影響を与えると思われる。
国産、輸入の豚肉価格の高値が「鶏肉」需要を高め、価格も上がっていく。
北米での「PED」は、年内一杯で終息には掛かると見られている。
近年の食肉生産は「疾病」との戦いで有るともいえる。

表③東京食肉市場 月間豚枝肉相場

豚肉 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 年間平均
2年 428 459 460 526 536 540 614 629 531 392 370 409 489
3年 417 468 496 540 592 616 632 567 484 419 411 499 533
4年 543 567 548 531 543 596 574 534 545 436 416 441 499
5年 412 461 509 525 478 489 513 427 422 405 409 432 449
6年 415 439 449 438 433 499 520 573 511 383 404 413 451
7年 405 409 442 475 462 556 512 524 464 394 420 448 474
8年 451 537 479 556 515 539 570 562 498 420 398 459 485
9年 418 461 481 543 503 590 620 533 494 385 369 483 482
10年 436 453 426 452 474 575 558 472 503 407 391 416 454
11年 377 413 440 455 439 527 516 542 502 383 345 370 442
12年 374 424 444 403 428 510 537 530 462 381 363 376 439
13年 431 446 424 430 483 538 558 518 442 468 494 555 497
14年 472 518 503 520 583 575 533 517 479 372 416 401 468
15年 387 416 435 421 438 530 502 383 393 377 358 455 443
16年 459 527 507 485 457 520 540 525 502 410 377 486 475
17年 444 479 493 433 527 528 520 493 513 421 406 501 479
18年 446 451 430 454 477 573 544 507 488 402 447 482 473
 19年 416 445 480 478 501 543 555 558 525 474 470 526 518
 20年 458 562 576 550 562 601 592 568 517 412 414 457 492
 21年 377 428 421 413 490 511 474 388 380 386 402 462 432
 22年 418 423 417 428 487 540 484 489 513 432 434 472 473
 23年 428 497 474 489 488 541 533 495 450 362 393 449 456
 24年 431 427 409 440 464 530 494 480 450 399 398 428 445
 25年 402 415 439 468 525 496 520 526 516 473 487 542 496
 26年 435 469 499 586                  

資料:農水省「食肉流通統計」  1.消費税を含む  2.取引頭数による加重平均価格

国産牛肉も頭数不足で、これから相場高に

国産牛肉に関しては昨年よりは落ち着いてきているものの、東北大震災の影響から牛の頭数が少なく価格は高騰が続くことが予想される。
肥育用の子牛の価格も1頭50万から60万円と高値を付けており、穀物飼料高で、出来上がってくる牛は、高くならざるを得ない。
とはいえ、生産者は飼料価格高騰の影響で、儲けが出ておらず廃業に追い込まれている生産者も少なくない。
生産・出荷基盤自体が弱くなっているのが国産牛肉である。 表は芝浦の和牛A3の月ごとの加重平均である。
昨年から続く高騰は2012年、2011年の相場より200円以上上がっていることがわかる。
特に今年の11月からは和牛の出荷頭数が減少するので、年末に向けて、和牛が不足し、工場が、1800円前後まで高値で推移することが予想される。

  和牛A3(税抜き)
2014 対前年比 2013 2012 2011
1月 1557 + 64 1493 1241 1444
2月 1606 + 47 1559 1273 1482
3月 1550 ▲ 15 1565 1283 1483
4月 1583 ▲ 21 1604 1372 1455
5月     1691 1393 1429
6月     1654 1381 1252
7月     1586 1396 1158
8月     1622 1310 1258
9月     1679 1413 1172
10月     1739 1462 1064
11月     1774 1577 1187
12月     1700 1611 1214
平均 1574  ▲ 65 1639  1393  1300 


輸入牛肉に関しては2014年の生産量はUSDAの予測で前年比5.4%減。12月時点の予想(6.0%減)から上方修正されたが、第2四半期に4%減、その他の四半期は6%近い減少と予想されている。また、飼料の高騰なども影響して、牛肉のカットアウト価格はチョイス、セレクトともに記録的な高値水準で推移するといわれている。

  米国産牛肉(円/lb)
2014 対前年比 2013 2012 2011
1月 187.46 ▲ 8 195.39 190.93 185.63
2月 190.25 ▲ 4 194.28 194.1 183.73
3月 198 + 6 191.79 194.36 187.72
4月     191.68 192.1 193
5月     179.59 187.3 184.11
6月     174.25 183.6 178.36
7月     176.58 180.36 177.76
8月     176.58 183.13 180.85
9月     175.6 180.25 175.93
10月     178.07 181.54 174.28
11月     183.31 192.02 186.68
12月     185.95 195.62 190.09
平均 192  + 8 184  188  183 


<出典> IMF - Primary Commodity Prices
牛肉も、国産、輸入合わせて高値相場と予測される。

鶏肉の「安い」時代は終わった

鶏肉の相場高騰の裏には牛肉相場と豚肉相場が隠れている。
国内外の牛豚の相場が軒並み高騰しているため、必然的に畜肉では鶏肉の需要が高まっていることは言うまでもない。
そのため、国内鶏肉の引き合いが強く、数量が足りていないために、この時期に下がるはずの相場が下がらず、堅調な動きを見せているのである。
昨年度ベースに何も考えずに特売計画など組んでいると、納品価格が全く合わずに利益確保できない状況に陥ってしまうので、注意が必要である。

国産鶏肉の相場は、牛肉や豚肉の相場が今しばらく落ち着かないため、今年は高い水準で推移すると思われる。
相場が高いときには、価値のある商材が売り込みやすい。特に銘柄鶏や地鶏などは注目があつまり、引き合いが強くなる。
また、輸入鶏肉に関しても引き合いが強くなるが、ブラジル産US産ともに国産鶏肉に近い価格に上がってきているため、結果的に国産鶏肉を使用する企業が多くなると思われる。
米国産鶏肉に関しては昨年から価格上昇しており2012年2011年から比べるとポンド当たり30円程度UPしている。
ブラジルに関しても以前よりも価格が上がっている。
この高騰した相場は、今後も引き続き高く推移するものと思われるため、鶏肉なら安く販売できると思っているならば大誤算である。
鶏モモ肉は昨年度ベースで60円/kg以上も価格がUPしている。鶏ムネ肉は安いから大丈夫!と思っているのも危険信号である。
いくら安いムネ肉とはいえ、昨年よりも50円~60円/kgアップの、高い相場となっている。

  米国産鶏肉(円/lb)
2014 昨年比 2013 2012 2011
1月 108.51 + 20 88.38 69.55 70.22
2月 106.75 + 13 93.32 71.47 70.18
3月 107.64 + 11 96.17 76.49 70.41
4月     100.2 75.99 72.01
5月     105.23 74.98 70.32
6月     102.72 74.96 70
7月     106.14 74.82 69.35
8月     104.23 74.75 68.05
9月     105.42 74.77 68.37
10月     102.78 75.68 68.33
11月     104.47 78.08 69.22
12月     107.81 81.61 69.93
平均 108  + 6 101  75  70 

<出典> IMF - Primary Commodity Prices

差別化×利益確保=銘柄鶏

以上のことから、ブロイラーや輸入鶏肉で唐揚をすると儲けは出ない&消費者には値上げをしたと思われるというダブルパンチのマイナスイメージとなる。
そこで、「銘柄鶏」を使った唐揚げを提案することを提案したい。
競合店との価格競争に巻き込まれず、さらに消費者の指名買いを行うことが出来る一つのモデルとなる。
ブロイラーモモ肉の納品価格が先に述べたように750円だった場合、銘柄鶏肉はブロイラー価格+20円~30円が一般的であるので、780円/kgで仕入れるイメージになる。
銘柄鶏で販売する場合は、モモ肉で100g148円以上がプライスラインである。
銘柄鶏をこのラインで販売していればブロイラーや輸入鶏肉のように、事実上の値上げをしなくても、148円で通常通り販売するだけでも値入率47.2%をキープすることが出来る。
惣菜では値入率50%をキープしないといけないことを考慮すると、銘柄鶏でも158円/100gの価格帯で十分であることがわかる。

差別化×買い上げ点数=希少部位

鶏唐揚げを販売する上でポイントとなるのが、競合と競り合わないブルーオーシャンにいることである。
鶏モモ肉、ムネ肉の唐揚げや手羽元、手羽中の唐揚げも一般的になってきているが、ムネ肉の一部を使った「肩肉」の唐揚げや、「鶏ハラミ、せせり」の唐揚げはほとんど見かけないためインパクトが強い。
生肉では売られている部位を、唐揚げにしたら美味しいということを知らない消費者も多いので、色々な部位を使うことも検討したい。
内臓肉も唐揚げにすると美味しい。
「肝(レバー)、砂肝」は居酒屋でも登場するベストセラーである。
そのほかにも、「膝軟骨」や「ヤゲン軟骨」なども唐揚にすると美味しい。 アイテム数を増やすことで作業性は悪くなるが、消費者の選択肢は増える。
「よりどりセール」にすることで、買上点数も増えて売上UPにも繋がる。
1P198円、よりどり3P580円など少量パックを多く買ってもらう手法をとるとよい。
また、唐揚げの場合は、詰め放題や量り売りなども販売方法としては最適である。
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