トレサビ法の概要
 牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法(牛肉トレサビ方)が6月4日に国会で成立し、11日に公布された。
同法はBSE発生を契機に「消費者の信頼を特に強く確保する必要」と、「BSEまん延防止のための基礎」とするため、すべての国内牛に義務付け装着される「個体識別番号」を消費者に伝達するのが目的。

「法律の趣旨」
 牛肉のトレーサビリティー・システムの必要性が公的な場で本格的に浮上したのが13年9月に国内で初めてBSEが発生してから。
国の失政が問われた「BSE問題調査検討委員会」の報告(14年4月2日)でも、「食品の安全性の確保のためにフードチェーン全体を通じたすべての食品に適用させるべきシステムであり、リスク管理の重要な手法として位置づけられなくてはならない」と、指摘された。
 BSEのまん延防止策としては、すでにBSE対策特別措置法(14年6月14日公布、7月4日施行)により、すべての国内の牛に耳標の装着が義務付けられている。
 国は1頭ごとに個体識別番号を割り振り、生年月日・移動履歴・その他の情報を記録し、管理するための体制を整え、1頭ごとのデーターが独立行政法人家畜改良センターで管理されている。
 現状でもインターネットで10ケタの個体識別番号を基に個体情報を引き出すことができる。
 トレサビ法では、流通・小売業者の負担が大きいのも事実。
 これについて、法律の「趣旨」では、「BSE発生により大きく減退した牛肉消費がいまだ回復しておらず「全頭検査をしても不安」という消費者が未だ多く見受けられる中で、牛肉に対する消費者の信頼をとくに強く確保する必要がある」とし、EUでの義務化の事例も参考に、個体識別情報の提供の促進を図ることも明記されている。

「施行期日」
 牛肉トレサビ法が施行されるのは、生産者が「平成15年12月1日」、牛肉販売業者(流通、小売業者)に措置が適応されるのは「平成16年12月1日」とされた。

 屠畜場から出荷される枝肉などを買い受けた販売業者から末端の小売業者、特定料理の提供者に義務付けられるまで、対象となる業者は法律への対応を進められなくてはならない。
 流通・販売業者が行わなければ成らない大きなポイントは

01. 仕入れ・販売データーなどの帳簿を3年間保存する。
02. 個体識別番号(または50頭未満のロット番号)を表示するの2項目。

法律の対象業者
「対称となる牛」
 原則として国内で飼養されているすべての牛に「個体識別番号」が割り振られ、牛の「管理者」が対象となる。
 法の対象外となる牛は(01)修正直後に死亡した牛 (02)屠畜直行牛 のみで、動物園で飼養される牛や、ペット用の牛も対象になる。
 管理者には、牛の出生・死亡の届出・譲り受け・譲り渡し、などの届出の義務が課せられる。

「牛の管理者」
「管理者」とは、
01.牛の飼養者
02.共同ほ育・飼育センター、繁殖センターまたは肥育センターの管理
03.牛の使用を行う公共牧場の管理者
04.試験・研究機関
05.牛の使用を行う教育機関

06.荷受業者(屠畜場での牛のと殺・解体を担当する当該牛を管理するもの)
農協家畜商などは、管理者に該当しない。
家畜市場も管理者に該当しない。
このほか、オーナー制度で牛を所有する者や飼育を依託している者は対象とせず、あくまで「牛の占有を支配している場合」が法律上の管理者で牛の運送業者は該当しない。

「販売業者」
 法律の対象となる「販売業者」とは「特定牛肉」の「販売」を継続かつ反復して事業活動をしている者で、食品衛生法の規定で「食肉販売業」の営業許可または卸売市場法の規定で卸売業務の許可を得ている者かどうかを基準に判断される。
 したがって「特定牛肉」の対象から牛肉を原料として製造した加工した加工品や調理品は除外されることから、これらの製造や卸売りを行う「製造業者」や、弁当などを調理し小売するいわゆる「中食業者」(料理品小売業者)は対象外となり、枝肉などの卸売り業者や精肉の小売業者が該当する。

牛固体識別台帳
 家畜改良センターが管理する「牛固体識別台帳」の記録事項には次の9項目が規定された。
01.個体識別番号
02.出生または輸入の生年月日
03.雌雄の別
04.母牛の個体識別番号
05.輸入者の氏名または名称および住所
06.管理者の氏名または名称および住所ならびに其の管理の開始の年月日
07.飼養施設の所在地および当該施設における飼養の開始年月日
08.とさつ、死亡または輸入の年月日
09.その他の記録事項

 「その他の記録事項」については、施行規制で01.牛の種別 02.牛の管理者の連絡先 03.輸入された牛の輸入国の国名および輸入者の連絡先 04.とさつされた牛について、屠畜者の氏名または連絡ッ先ならびに、其の屠場の証明および所在地
05.輸入された牛について、輸入先お国名、輸出者の氏名および連絡先の5項目が明記された。

記録される牛の種別
 牛個体識別台帳に記録・管理される事項のうち、「牛の種類」については、次の11類に区分することが規定された。

01. 黒毛和種
02. 褐色和種
03. 日本短角種
04. 無角和種
05. 黒毛和種と褐色和種との交雑種(この種と黒毛和種または褐色和種との交雑種を含む)
06. 01から04の種間の交雑と01から05の種との交雑種を含み、05の種を除く
07. 肉専用種(01から06および11の「交雑種」を除く)
08. ホルスタイン種
09. ジャージー種
10. 乳用種 (08および09を除く)
11. 交雑種 (01から07の「肉専用種」と08かた10の「乳用種」の交雑およびこの種と導入乳用種との交雑種)

 牛の品種情報については、「生産サイドはもとより、販売業者の品揃えや消費者の商品選択上に重要な役割を果たす」もの。
 さらに「管理者」の負担が多くなるので「子牛不足払い制度」の交付金の公布基準となる品種区分との整合性を取ることを前提に、この11区分に落ち着いた。

情報の公表
 牛固体識別台帳に記録される情報は「牛のとさつ、死亡または輸出の日から3年間保存する」ことが規定されたほか、家畜改良センターは、記録された情報のうち、次の事項を除いて、インターネットなどで情報を公開する。

 除かれる情報は
01. 管理者の氏名または名称
02. 管理の開始および終了の年月日
03. 飼養施設の所在地(都道府県名を除く)
04. 輸入者の氏名または名称、住所および連絡先
05. 屠畜者の氏名または名称および連絡先
06. 輸入者の氏名または名称、住所および連絡先

 ただし、仮者、輸入者、屠畜者がこれらの事項を公表することについて同意した場合には、家畜改良センターが其の事項を公表できるようにした。

届出と耳標の義務
 牛の「管理者」などが届け出なければならない情報は前述した「牛固体識別台帳」に記録される情報で、必要な事項は、書面または電子メール、FAX,電話で、家畜改良センターへの連絡が義務付けられる。

 届出を行わなけらばならない時期については、出生、輸入、譲渡・譲受、死亡、とさつ、輸入の各段階と「牛固体識別台帳の記録事項に変更があった場合」で、それぞれの「管理者」が「遅滞なく」届け出ることが義務付けられる。

 これらの規定による届出を行わず、または虚偽の届出をしたものは罰則規定により「30万円以下の罰金」に処せられる。

 このうち、牛が出生したときの届出では、乳用種はヌレ子取引の時期を考慮し「生後1週間以内」、肉専用種は、家畜登録制度や子牛不足払い制度における個体登録の申し込み時期などを考慮して「生後1から2ヶ月以内をメドとすることも可能とする」ことが運用通知で示されている。

特定牛肉の表示
屠畜者
「屠畜者」が屠畜した牛から得られた「特定牛肉」を他者に引き渡すときは、対応する牛の個体識別番号を表示しなくてはならないと義務規定された。

販売業者
「販売業者」(卸売り・小売業者など)が特定牛肉を販売するときは、「該当牛肉または其の容器、包装もしくは其の店舗の見やすい場所に個体識別番号を明瞭に表示しなくてはならない。」と、規定された。

 また、「店舗の見やすい場所」に表示するのは「販売の相手方が不特定かつ多数の者である場合に限る」こととされ、一般的に小売に小売を示している。

 表示しなくてはならない個体識別番号は、販売される特定牛肉に対応することが原則。しかし、次の要件に該当する場合は2つ以上の個体識別番号を表示できることとされた。

01.いずれの牛から得られたものかを識別することが困難な特定牛肉であること。
05.50頭以下の牛から得られた特定牛肉であることのいずれにも該当すること。

また、販売業者はこの個体識別番号の表示に代えて、これに対応するもの(荷口番号)を表示しても良いと規定された。

荷口番号による表示
 荷口番号の表示により、個体レベルで特定できなくても「対応する牛の範囲が限定されれば、其の範囲内で情報の確認が可能で、BSE発生などの万が一の事態でも範囲が特定されることから、安全に対する信頼を確保するとう法律の趣旨からも有意義」と農水省は説明している。

 この荷口番号については、仕入れ先などの他者が定めた荷口番号を表示する場合は「該当荷口番号を定めた者の氏名または名称および電話番号その他の連絡先を表示すれば、から図示も自らの氏名などの表示し、または消費者の求めに応じて当該荷口番号にたいする個体識別番号を明らかにする必要はないとされた。

 なお。個体識別番号や荷口番号の表示は「一つの牛肉」が単位とされており、卸の段階では部分肉や「牛正肉」の1ブロックまたはこれを複数分まとめた1包装単位を指す。

 小売段階では、パック売りの場合は1パックごとまたはこれらを同一商品として、他の商品と区分して配置した1販売区画。量り売りの場合はショーケース内における同一の商品を陳列した1トレイがこれに相当する。

特定料理の表示
 「特定料理または其の店舗の見やすい場所に特定料理の主たる材料の特定牛肉の個体識別番号を明瞭に表示しなくてはならない」とされた。

 また、2つ以上の個体識別番号を表示する場合は、「荷口番号」の表示ができるとされ、荷口番号の表示方法を含めて販売業者と同様の用件が定められている。

帳簿の備え付け
 屠畜者および、販売業者および特定料理提供者は、帳簿(磁気デスクを含む)をそなえ、特定牛肉の引渡しもしくは販売または特定料理の提供に関し次の事項を記載または記録し、これを1年ごとに閉鎖し、閉鎖後2年間保存しなければならないとされた。違反した場合は30万以下の罰金が適応される。

 販売両者(卸・小売)と特定料理提供業者が記録しなければ成らない事項は仕入れた特定牛肉ごとに
01.個体識別番号(卸・小売業者は荷口番号でも可)
02.仕入れ年月日
03.仕入先の相手方
04.仕入れた特定牛肉の重量
の4項目。

 卸売り業者はこれに販売した特定牛肉ごとに個体識別番号(または荷口番号)、販売年月日、販売先、重量を記録しなければならない。

勧告および命令
 農林水産大臣は、必要な措置の「勧告」を行うことができる。理由なく是正を行わなかった場合はさらに「命令」することができる。 この命令に違反した場合は30万円以下の罰金に処せられる。

支援措置
 農水省は牛肉トレサビ法の公布に伴い15年度関連予算で支援措置を講じている。

 小売業や卸売業者に対しては、今ぴゅ田―のソフトの開発や、計量器などの機械類の導入やする資金に対して政府系の金融機関からの低利子融資を実施する。

 また、食肉センター、食肉卸売市場、食肉販売業者を対象に、食肉関連機械類のリースを通じて対応への支援を行うことにしている。