味噌・塩味でせめる「内臓焼肉」
有 東海フードプラン 百井 大治
 
「牛内臓肉(可食部分)は約17万トン」

2001年の牛肉国内生産量は、約31.5万トン。輸入牛肉が約67.5万トンで、約99万トン(部分肉ベース)。
内蔵肉は、国内生産量 4.4万トン(推定)、輸入内臓肉は 約12.5万トンの約16.9万トンであった。

食肉の昨年のマーケットボリュームは約116万トン(牛肉+可食内臓肉)で、内臓肉は約14.6%の7分の1にあたり、カテゴリー別でみると、和牛やホルスの牛肉に匹敵する大きなマーケットを形成していることになる。

豚肉は部分肉ベースで昨年の生産量・輸入量は155.6万トン。
内臓肉は国内生産が13.08万トン、輸入が11、153トンで、合計約14.2万トン。豚全体の約全体の8.5%になる。

したがって、可食内臓肉の消費量はかなり大きく重要なマーケットであることを認識することが必要である。

これら内臓肉は、ほとんどが焼肉(一部は煮込み料理)、それもコリアンBBQとして食べられている。

そこで、今回は、内臓肉をコリアンBBQを中心とした商品化を検討してみる。


■輸入内臓肉需給量(14年1月6月)(単位:d)
商品名
規格
原産地
数量
タン
フローズン
米国
12582.5(86.7%)
 
フローズン
豪州
1902.3(55.2%)
 
フローズン
全体
16707.8(97.4%)
 
チルド
全体
4379.2(63.8%)
ハンギングテンダー
フローズン
全体
6892.1(42.1%)
アウトサイドスカート
チルド
全体
5352.4(63.8%)
MCトライプ
フローズン
全体
4138.1(68.6%)
レバー
フローズン
全体
783.2(27%)
小腸
フレシュフローズン
全体
702.1(42.3%)
 
ボイル
全体
1818.3(33.8%)
シマ腸
フレシュフローズン
全体
2457.4(42.3%)
■13年分
商品名
規格
原産地
数量
タン
フローズン
米国
28631.3(95.1%)
 
フローズン
豪州
6328.7(98.6%)
 
フローズン
全体
41067.1(91.6%)
 
チルド
全体
13038(102.7%)
ハンギングテンダー
フローズン
全体
28124.1(76.4%)
アウトサイドスカート
チルド
全体
15935.3(102.7%)
MCトライプ
フローズン
全体
10406.7(90.1%)
レバー
フローズン
全体
5274.9(94.9%)
小腸
フレシュフローズン
全体
3140.5(87.5%)
 
ボイル
全体
10714.7(98.8%)
シマ腸
フレシュフローズン
全体
10991.7(87.5%)

■国内生産量(千d)
 
14年1月-6月
24.4(105.6%)
62.4(97.8%)
13年
44.1(84.6%)
130.8(97.8%%)

※輸入牛タンチルドは通関コード0206,10-010の45%、

mcトライプは0504,00-090の90%。
ハンテン・アウトのチルドは同コードの55%。
小腸のボイルは1602,50-100の85%でそれぞれ推計
小腸のフレッシュ・フローズンは0504,00-019の20%,シマ腸は同コードの70%。
※国産は家畜一頭あたりの平均可食副生物重量(牛40kg、豚8kg)にと畜頭数を乗じて推計。

牛内蔵肉「アウトサイドスカート・ハンギングテンダーと牛タン」
アウトサイドスカートは、「ハラミ」。ハンギングテンダーは「サガリ」の呼称でよばれ、昭和50年代に、牛肉の代替品として輸入され、ホットプレートと焼肉料理の普及で消費が拡大された。

形態がフローズンからチルドが多くなり、醤油味のタレばかりでなく、「塩タレ」が最近開発され「塩ハラミ」の名称で、「塩タン」と共に、焼肉需要の拡大の中心部位になっている。
また、50年代からの「ハラミ」ファンに、堅調な底堅い需要がある。

昨年はBSEの影響もあり、輸入は約4.4万トンであったが、多い年には7万トン台も輸入されている商材である。

「牛タン」は、近年輸入が急増している部位である。
昨年は、アメリカから約2万8千トン、オーストから約6.3千トン。カナダ 約3.1千トン、ヌージーランド 約2.4千トンと、グレインフェッドの多くを輸入している。


「アウトサイドスカート」
赤身肉に見えるが、内臓肉(横隔膜)である。韓国語で「アンサンチャル」。

内臓肉は、ローカロリーで、内臓肉の栄養素は人間の身体に一番近い状態で入っているので、取り込みやすく吸収しやすい特徴がある。

内臓肉の特徴と、効果をポップ等でもっと消費者に認知してもらう事も重要である。

アウトサイドスカートは、表面の皮と、両端の身の厚さが無い部分は除去する。最近はスキンレスのものが多く輸入されている。
5から6ミリの幅で写真のように押すようにスライスする。
最近は「塩ハラミ」を売り物にしている焼肉屋も多い。
薬味に、韓国の発行調味料の「コチジャン」などの辛味の調味料を添付する。

アウトサイドスカート 両サイドの身の厚さが無い部分を除去する 裏面のスジの部分を下側にして押し切りする。 5ミリから6ミリの幅で、霜降りの面に平行にスライスする。
透明感のある「塩たれ」で味付けをする。 「コチジャン」などの薬味を加えて商品化。


「ハンギングテンダー」
中央に、太い筋が入っているので、ここをセンターにして2分割する。
「サガリ」の名称で焼肉店でも人気のアイテム。

薄皮とスジを除去すれば、非常に柔らかいので、サイコロステーキなどにも商品化されている。
たれ・塩、どれにも味が染み込み込みやすいので味付けがしやすい。

 

ハンギングテンダー の両面。

表面の薄皮を除去する。

中央にある、太いスジを除去する。このときに、赤身のブロックを大きく取る。
霜降りのスジにそって、削ぎ切りにする。 「ネギ塩」のたれに、ネギをたしてかける。



「牛タン」
「舌」の読みが「タン」と思っている人も多いが、英語の「Tongue」で、韓国では「ウソル」と言う。
最近は皮付きのチルドタンの流通が多くなり、本物の味が味わえるようになった。

そのため、タンの味付けのまずいもの、冷凍の解凍が上手くいかないものは商品価値を下げ、評判を落とす原因にもなる。

味のバリエーションで、最近は「塩タレ」ばかりでなく、厚切りにして「味噌」で漬け込んだものなども売れている。

牛タン スイスカットタン。 表面の皮を、丁寧に除去する。このとき、皮を残さない事。
タン元から、「タン塩」用に薄くスライスする。 塩コショウで、味付けをしてもよいが、変色が早いので「牛タン」のタレなどを添付するとよい。


「牛小腸・ボイル小腸・大腸・ヤン」

「牛小腸」
大腸よりも柔らかくて食べやすい部分。
焼肉ばかりでなく煮込みや、串焼きなどにもつかわれる。
「丸腸」としての名前も最近多く聞こえ、腸を開いていないものを「マルチャン」、開いたものを、脂がおおくあり、煙が良くたつので「ケムリ焼き」。梅宮 辰夫プロデユースの「辰チャンのホルモン道場」では、「秘伝のつぼ焼き」のネーミングで店のシンボルにもなっている商品である。
腸に付着した脂肪は厚く、これが国産小腸の象徴の特徴になっている。
脂肪分にまで味をつけることを考えると、味付けはあおりの高い味噌味が良い。

牛小腸 ひも・ホソチョウ、とも呼ばれる、チョウの中を十分洗浄する。 腸を裂かず、そのまま商品化しても良い。 腸を開いて一口サイズにカットしてもよい。
市販のトンミソなど、粘着性の高い味噌で味付けをする。 味噌味だけでも美味しいが、付けタレ、あるいはコチジャンなどを添付すると良い。


「牛ボイル小腸」
ボイルすると、商品の持ちが良くなり、臭いも抑えられる。
モツ鍋や、名古屋の「土手鍋 」などの煮込みにも使われる。
焼肉にすると、あぶるだけで食べやすく、やわらかく、商品化しやすい。
味付けはある程度の脂がボイルすることで除去されているので、透明感のある塩味のたれが良くあう。

ボイル小腸 ボイルした小腸は、脂肪分を落とさないように商品化する。 焼肉用には5センチ位の幅でカットする。煮込みには、4センチ位。 コチジャンなどが入っている、少しピリカラのタレで商品化。


「牛大腸」
テッチャンは、朝鮮語で「大腸」のことで、そのまま、ネーミングになった。
西日本では、脂を多く残し、東日本では、キレイに掃除する傾向がある。
赤身の脂とは違いあっさりしているので、胃にもたれない。
いくらでも、飽きずに食べられる商品である。
特に、シマチョウは、おいしい。
国産の大腸には、胸にもたれない脂肪が付着していて、これが特徴になっているので、輸入の大腸にも、5ミリの厚さで脂肪が付着している商品などが開発されている。
牛大腸 シマチョウと直腸の部分を合わせて商品化する。 脂ポイものは、「ネギ塩」などのタレが良く合う。 シマチョウだけのものは、100円位 高く値付けする。


「ヤン」 
牛の第3胃と4胃との間に位置しており、センマイの身が厚くなった部分ともいえる。
牛1頭から、約50gか取れない。
味は、あさっりとしており、歯ざわりが良い。
塩味でも、キムチ味でもおいしい。
味噌で少しコチジャンが効いているたれがお勧め。
ヤン 左が処理する前のもの。右が皮をむいたもの。 あっさりしているので、キムチや味噌のタレなどが良く合う。


「豚内蔵肉 ガツ・上ミノ・ボイルホルモン・大腸・テッポウ」 

「豚生ガツと上ミノ」
豚の胃袋は、「ガツ」と呼ばれ、鮮度劣化が早いのでボイルして流通されていることが多い。
ボイルしたものを細かく刻み、味付けをして「酒のアテ」などに加工して食べられている。

処理したての鮮度の良い生ガツは、臭みが無く、柔らかいので、煮込みばかりでなく焼く肉にしても美味しく、安い価格帯の商品として提供する事が出来る。

胃袋の、入り口部分は、身が厚く盛り上がっており個々の部分を写真のように取り出し「豚上ミノ」として、新しい商品化をすると良い。

「上ミノ」はあっさりとして、臭みが無いので、牛のジョウミノよりも食べやすく柔らかい。
価格は、牛のジョウミノと同じか、10円くらい高く値付けするほうか良い。

豚ガツ・上ミノ 生がツは、鮮度の良いもののみを使用する。 胃袋の身の厚い部分を皮から剥ぎ取る。
1袋から、100gくらい「上ミノ」が取れる。 一口サイズに、牛のジョウミノのように商品化する。 左が上ミノ。右がガツの焼肉用。
豚の内臓に良く合う、「韓国風味噌焼」のタレで味付け。 豚上ミノは、100g230円くらいで牛のジョウミノと同じくらいの価格で販売する。


「豚ボイル小腸(豚ホルモン)」
豚の小腸は痛みやすいので、ボイルして流通している。
モツ煮込みに使われるが、焼肉にしてもおいしい。
アサッリとしているので食べやすく、たくさん食べても胃にもたれることは無い。
味付けは、小腸にほとんど味が無いので、おいしいたれの味で食べるのが一番。
豚ボイルホルモン 小腸は、菊脂を中心にカットする。 3から4センチ幅で切り込む。 コチジャンなどの薬味を添付する。


「豚直腸(テッポウ)」
豚直腸は「テッポウ」とも呼ばれる。
生の焼肉は、クセが無く食べやすい。
フクロ以外の部分は煮込みなどに使い、焼肉には適さないので、フクロ部分を
5センチ角に切手、塩味で味付けをする。
豚直腸 テッポウとも言う。 ある程度の脂を鋤く。 塩味があっさりしていて美味しい。


「豚大腸」
ボイルした大腸は柔らかくホカホカしているので、モツ煮込みに適している。
生の大腸も柔らかいので、脂をあまり除去せず、ある程度大腸に付けて焼肉にすると、非常にやわらかく美味しいホルモン焼きになる。
ニラ・モヤシなどの野菜を入れて、「鉄板焼き用」などに商品化すると良い。
豚生大腸 脂をある程度付けて商品化する。切り込みはテッポウと同じ。 ニラ・モヤシなどを混ぜて、味噌をベースに味付け。 安い価格のホルモンの焼肉用。


「豚焼肉のセットメニュー」
  
最近は豚肉の持つ「食べて元気」になる要素などが見直されており、「豚ばら肉・あご肉」など、焼肉材料として、多くが活用されている。

とくに、豚ばら肉は、「テジカルビ」として、キムチ味・味噌味で、臭みと脂を抑えた味付けで需要が待っている。

「テジカルビ」を中心に、内臓肉の味付けのバリエーションで、セットアイテムを拡大してもらいたい。

豚の焼肉セット テジカルビ・ガツ・テッポウ・上ミノ 盛り合わせ 680円。豚焼肉セット。テジカルビ・上ミノ・テッポウ盛り合わせ。