2つの視点が交錯「安全性」と「表示問題」
 
【牛肉とレーサビリティーを巡る経緯】

国産牛のトレーサビリティーについての議論は、BSEの発生を契機とした「安全性」に関する視点と偽装表示問題を発端としての「表示問題」の視点が交錯している。

当初、農林水産省はBSE防疫体制の視点から、BSE検査で陽性牛がみつかったあと、と畜場からさかのぼって肥料生産者や子牛生産者ほかの生産履歴を特定するための手段として、耳標による個体識別を利用したトレーサビリティーを想定していた。

7月4日に施行されたBSE特別措置法でも、国内で飼育されているすべての牛に耳標の装着が義務付けら、「個体識別番号」の付与と関連情報が個体ごとに記録・管理され、家畜改良センターのデータベースとして一元的に管理されている。

検査が行われると畜場までの履歴がすべて把握されることになり、発生時における生産段階の追跡は迅速に行われるシステムが構築されたことになる。

その後、牛肉の偽装問題で、輸入食肉を国産表示していたなどの事例が多発。

食肉の表示に対する信頼が大きく揺らぐという事態になった。

3月22日に農水省が関係した「牛肉のトレーサビリティーに関する懇談会」では、消費者、食肉業界、学識経験者らが出席。

内外のトレーサビリティーの取り組み事例、家畜個体識別の仕組みを中心に情報提供と意見交換が行われた。

この議論を受け継いだ形で、14年度BSE関連対策の一つ「国産牛肉生産情報提供モデル事業」の推進のため「国産牛肉トレーサビリティー検討会」が設置され、すでに5月28日と7月4日の2回開催されている。

検討会の座長には、3月の懇談会の座長を務めた矢坂雅充氏(東大助教授)が選任され、食肉業界のほか、消費者団体、学識経験者ら16氏が委員となり、農水省のほか厚生労働省、公正取引委員会がオブザーバーで参加している。

この検討会では、国産牛のトレーサビリティーの基本となるルールの骨子になることを前提に議論がなされ、システムの技術的な側面から検討が進められている。

とくに農水省からは、システムが法的な義務付けを見据えた制度の基本原則ともなることから、慎重な議論が要請された。

また、今年度から実施されるフィールド実証の「モデル事業」での基本システムともなることから、技術的にも実現性のあるシステムが念頭に置かれた。