04年の精肉部門のストライクゾーン
平成15年11月12日
株式会社 月城流通研究所 月城 聡之
1.「切り落としコーナー」強化で「すき焼き」の提案
 「切り落とし肉」は牛肉・豚肉を問わず、作業性が良いということと、料理の汎用性が高いということで、商品化が年々増えているアイテム。

 04年は、「切り落としコーナー」の充実を「縦割り陳列」の中で料理用途の最重要なカテゴリーとして確立させたい。

 やはり、これからは中分類の一つとして「切り落としコーナー」を打ち出していく。
其の中で特に、「切り落とし・すき焼き用」として、「すき焼き」を「切り落とし肉」で提案していきたい。

 「すき焼き」は特定牛肉料理(焼き肉・ステーキ・シャブシャブ・すき焼き)の中で最も外食より家庭料理としての出現回数が多いからだ。

 精肉は近年、売場装置として、「ばら売り」で市場の臨場感の演出効果の高い「青果売場」、平ケースや刺身の対面を取り入れた「鮮魚売場」、量り売りや出来立てで「香り出し・視ずる感満載」の「惣菜売場」に比較してインパクトがうすくなっている。

 それだけに攻める売場のアイキャッチとしても、改めて新しいコーナーカテゴリー展開が必要である。
また精肉の「売場装置」を再考察する良い機会になるはずだ。

2.ミートデリ「グリル台」の活用で新しい活路を開く
 中食の普及や、家庭料理の回数が減るに従い、精肉部門の役割も変わってきている。

 包丁を使わない主婦が増えたというが、毎日包丁を研がない精肉担当者も増えている。
それは、研ぐ必要がないオペレーションが増えているということと同じで、我々の日常業務も大幅に見直す時期に来ている。

 特に、「ミートデリ」を併設し、肉惣菜を強化する食品SMは増えているが成功率は数パーセントといわれるくらい、ミートデリは飾りだけでコンセプト倒れになっているところが多い。

 それは、店内の惣菜や、冷凍調理食品をダブっている提案が主力で精肉のデリとしての独自性がないので、長続きしないからだ。

 フライの揚げ物や、サラダなどでは、ミーチデリは成功しない。
そこで、精肉のデリや調理・試食は、「電磁グリル」を活用し、新しいアプローチとして「香り出し・動き・音・視ずる感・喜ばれる接客・提案」を行っていく。

 イーチーズでは、フライパンで「煮込みハンバーグ」を煮込みながら其の横でイロイロな食材をいためて試食させながら販売している。

 「グリル台」があるからといって四六時中試食をしなくても、イーチーズのように「煮込みバーグ」で香り出しができる。日本風に、「煮豚」を煮込みながら、動きを出すことも出来るはず。
また、煮込み料理を作りながら、牛タタキのブロックを作りながら試食販売するとか、いろいろな活用方法がある。

 本当に美味しい、ミートデリを調理まじえフレンドリーな接客でファンを増やしてもらいたい。

3.「牛の個体識別表示」で牛の差別化を静かに訴求
 牛肉トレビ法が03年12月から施行された。

 04年12月からは、小売業者にも牛の個体識別番号表示が義務化される。

 また、国産牛肉の仕入れ台帳を3年間保管し必要なときに提出できる準備が義務化になった。

 イギリスで1986年に確認されたBSEは、2002年になってもイギリスでは消滅せず、1122頭も確認されている。 
日本で発見された8頭目は肉骨粉使用禁止後の牛で「新型BSE]が発生した。

 この新タイプは、イタリア・フランスでも発見されており、牛のBSEへの警戒は緩めることが出来ないのが世界的状況である。

 従って、トレサビを販促のツールとして利用することが商品力強化につながる。

 トレサビが明確に打ち出せない食肉は販売できないということにもなる。

 「牛の個体識別表示」は、ラベルプリンターの中に書き込むのが一般的に普及することになるが、それまでの間は10ケタ耳標を大きく表示することで信頼感をアピールすることも戦略として効果がある。

 この方法の方が費用が掛からず、消費者にトレサビを行っていることのアピール度が大きい。
パネルやパソコン画面、SPシールなどトレサビの店頭表示方法にイロイロ取り組んでもらいたい。




4.「ブランド豚肉」は飼料まで遡って「健康食品」でアピール
 8月から豚肉に牛肉と同じくトレーサビリティJAS(生産情報公表豚肉の日本農林規格)が施行される。
識別番号、出生日、与えた飼料、飼養場所、使用した動物用医薬品など八項目を記録して、インターネットや店頭表示で公表することが条件になる。

 細目はこれから審議されるが、豚肉の場合は一貫生産が主力なので生産流通の経路を明確化することが容易である。

 最近の豚肉はテレビからの情報で、「体に良いもの」という健康食品としてのイメージが大きくなってきている。

豚肉の特徴である、ビタミンB−1・オレイン酸などは、飼料の配合によって増加する。

豚肉の特徴は「飼料」と「生産者」によって決定付けられるといっても過言ではない。

従って、豚肉のJAS導入を契機に「黒豚」依存のブランド豚から特徴のある生産者・飼料メーカとの取り組みで自社のコンセプトにマッチした新しいブランド豚肉の開発に取り組むことが必要である。

 また、其のブランドの定着と拡販のために生産者・飼料メーカー・パッカー、屠畜業者までも含めて販促に取り組んで、トレサビを店頭やネットなどを利用し販促ツールとして活用したい。

5.「ラム・ジンギスカン」の定番化
 食肉摂取は、肥満や成人病の要因ではなく、脳卒中を防ぎ、老化を防ぐために不可欠というアナウンスが多くされるようになってきた。

 「食肉は食べて健康と長寿の秘訣」という考え方が日本人にも広まっている。

 「ラム」は羊肉というくくりの中で、マトンよりは臭みがない程度で、「ラムラック」をこだわり商材として販売するくらいでSMでは積極的に販売する機会は少なかった。

 しかし、昨年から「ラム肉」の中にある「カルニチン」が脂肪を効果的に燃焼させる注目の成分ということで何度もテレビの「体に良い食材」として取り上げられている。

 「脂肪を落としながら、火加減は中火よりやや弱火にして、ミデイアムレアーで焼くのがベスト」などのメッセージがテレビから出ているので、品揃えアイテムとして「ラム肉ジンギスカン」・「骨付きロース(ラック)」などを品揃えし、食肉は健康食品というコンセプトのラインナップの品揃えの一環で販売していきたい。
 味付けの袋入り「ラム・ジンギスカン」は冷凍でも販売しやすいので、100g100円検討で、300g・300g×3パック、などの品揃えで販売したい。

6.キット商品・盛り合わせのアイテム拡大
 1トレイに数品の商材や味付けのバリエーションのある盛り合わせアイテムや、野菜や付け合せの商品と共に1パックで、料理が完成するアイテムを拡大する。

 特定牛肉料理は、平日より週末や休日に需要が拡大する。

 焼肉は、平日は単品で、週末は数種類の部位別・畜種別・味付け別(タレ・スパイス等)のバラエテーパックを充実する。

 また、平日は「1人前お鍋」など、1トレイで料理が完結アイテムを充実し、週末は家族で食べられるアイテムを充実する。

 食肉の一品単価は、他の商品と同じく下降しているが、買い上げ点数を増やすことが難しいだけに、セットアイテムを充実することで一品単価を上げることが出来る。

 加工の手間を省いたアイテムや、キットのアイテム、バラテイーな盛り合わせなど、平日と週末をメリハリをもって売場展開していきたい。