「鳥インフルエンザ禍  精肉売場の対応策」
(株)月城流通研究所
代表 月城 聡之
「鶏肉生産も大打撃」
 現在の「高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)」は03年2月にオランダで発生したものが偏西風ルートで1年かけてヨーロッパ・アジアを汚染し日本にたどり着いたもので、これからの被害の拡大の可能性も予測される。

 日本で1月13日に79年ぶりに確認された「鳥インフルエンザ」は、3例目の2月26日の京都府船井郡での発生で、感畜が市場に出荷されたため、消費者の鶏肉や業界への不安が増大し、消費大幅減の重大な影響がでた。
また、海外からのウイルスの侵入を防止するため、鳥インフルエンザ発生国からの「家禽・家禽肉の輸入停止措置」が現在も実施されている。

 今年3月の鶏生肉の輸入量は、前年同月比50%減の1万8200トンに。
4月は同40%減の2万2500トンと予測され、輸入の9割超は、まだ汚染されていないブラジルからのものだ。

 まだ発生していない日本各地の鶏肉・鶏卵プラントは2重3重の網がけで、野鳥・野鼠の侵入を防ぎ、鶏舎等への出入りに際する消毒の徹底などで、防疫に取り組んでいる。


 3月31日の「鶏肉の相場」は、「モモ肉」がキロ当たり「451円」、「ムネ肉」が「213円」で合わせて664円と言う事で、生産の採算ベースである、「プラス780円」を大きく下回っている。

 この相場では、年間出荷2000万羽のプラントを持つところでは月間3億円の赤字をこうむると言われている。

 4月からはトウモロコシの世界的不足で穀物飼料がトン当たり2900円上がり、また10年前に導入された「食鶏検査制度」の検査の強化と、施設等の改善費用負担の増加で、さらに「キロ30円から40円」のコストアップが予想されている。その中でのこの事件で、生産基盤も大きな打撃を受けているのが現状である。

鶏肉の安全性表示(食品安全局)



「国産銘柄鶏やブランド鶏肉の健闘」
「地産地消」の地元鶏肉も立派なブランド。地元での安全性を訴求するパネル
 4月1日の週の鶏肉売上は、「先週と変わらず」と答えたところが約半数になり、ようやく底打ちの感が出てきた。(日本食鳥協会聞き取り調査)

 今回の「鳥インフルエンザ禍」では、発生地は大打撃が続いたが、その他の地域では、「通常のブロイラー」と、「地鶏・銘柄鶏」・「企業で名付けたブランド鶏」との売れ行きの差が大きく出た。

 通常のブロイラーはやはり、大打撃で大幅な販売数量減であった。生産でも、ブロイラーの凍結保存が6割から7割という週が何週も続いたことで、末端でのブロイラー需要が急激にシュリンクした事が判る。

 しかし、「品種・飼料・肥育方法・出荷日令」などにこだわりをもった「銘柄鶏」・「ブランド鶏」はそれほどの影響も無く、消費の回復も早かった。

 「卵」においても、「通常の白卵」は売れなくて大打撃であったが、「特殊卵(ブランド卵)」は通常の売れ行きを見せたのと同じである。

 この事は、消費者が、「安心して食べられる安全な商品を買い求めた結果」であり、「ブランドを信用して買い求める事」が明らかになった事例と言える。

ブランドの鶏肉を中心にブロイラーを含めて積極的に展開する
 もちろん、店への信頼度と、商品への信頼度がそれぞれプラスされた結果であるが、鶏肉・卵のブランド化を推し進めることが不可欠なことを知らしめたと言える。

 「鶏肉」には、「地鶏」・「銘柄鶏」以外に生産・流通業者で作られた様ざまな、「ブランド鶏」がある。

 その生産量は、全体の15%近くまで伸びてきている。と、言われている。それだけ、特徴ある鶏肉の生産に、流通も消費者も関心を持っていると言う事である。

 例えば、「とうもろこしを使わずに育てた、ピンク色の肉色の鶏肉(桜姫など)」、「アロエなど人の健康に良い飼料を給餌した鶏肉(アロエ鶏など)」、「木酢などを与えたビタミンEを多く含み、低脂肪で、低カロリー鶏肉(森林鶏など)」など、さまざまな視点から鶏肉のブランド化が進められており、それらの鶏肉はこのような不安が蔓延している中で非常に健闘し、通常のブロイラーと一線を画す効果があったと言える。

「安全性やブランドも 積極的に販促訴求する」
ブランド鶏肉を積極的にチラシ広告などで継続して訴求
 今回の「鳥インフルエンザ」では、科学的な知識や処理・流通の過程で講じられている安全性の確保のための措置に関し、正確で分かりやすい情報の提供に努める必要がある。

これについては、食品安全局が作成したPOPや、日本食鳥協会が作成したPOPなどを店頭に掲載する事などが効果的である。

 鶏肉の売り場では、企業のコンセプトにより差はあるが、「国産銘柄鶏」や「ブランド鶏」を柱にし(1種類でも数種類でも可)ブランドの信用を獲得し、価格での選択が出来る一般ブロイラーで消費者に選択の幅のある鶏肉のカテゴリーを構築する事が売上を多く獲得するポイントである。

 また、最近多くなった「地産地消」で地元の鶏肉の訴求も、「地元産」が「ブランド」になり、差別化の対象になる。

取り扱いの鶏肉カテゴリーをわかりやすく表示する
 「四里四方に病なし」と言われるように、地元の生産物は、地元の住民にとって馴染みやすく生産に近い場所にいるだけに生産情報が入りやすい、と言う事もあり、販促訴求しやすい有利性がある。

 また、生産者や産地も含めて地元は積極的にアピールすることが安心して購買に結びつくことになる。

「食に対する不安を払拭するためにトレサビ活用を」
 食肉の疾病はこれからも、そればかりでなく多くの問題が起こる可能性が大であり、多くの課題を課せられることは間違いない。

 これは、それだけ食肉の安全が消費者にとって、これからも重要な課題であるからだ。それだけ食肉への比重が高まっているとも言える。

 そこで、根本的に取り扱い食肉の安全を確認し消費者に安心感を持ってもらうための取り組みが最重要である。

 そのためには、
1. 取り扱い食肉のカテゴリーごとのブランドの説明。
2. その取り扱いブランド食肉の特徴の端的な説明。(比較検討しやすいように)
3. ブランド化した食肉の生産地・生産者からト畜・処理流通までのトレイスを表示(店頭や、ホームページ等の活用)
4. ブランド食肉の試食やPOP/チラシ等の積極的な活用による販促活動。
を継続して続ける事が必要である。

 8月からは「豚肉生産JAS」、12月には「小売り牛個体識別表示の義務化」などの課題を控えている。
これは、トレサビをはじめ、取り扱い食肉の特徴を消費者にアピールできる良い動機で、このスケジュールに従って鶏肉ばかりでなく、すべての取り扱い食肉(ブランド化して販売しているものはすべて)の情報の開示と、明確に出来る商材を取り扱う姿勢が必要である。

トレイスを明確にしたPOPを店頭やホームページでアピールする