雑誌原稿 17年1月 加工肉売上動向と今後の傾向
食肉加工品・素材型から料理提案型で需要の創造
(株)月城流通研究所
代表 月城 聡之
新しい需要は用途訴求から
 日本の食肉加工品の生産量は平成7年の55万3771トンをピークに、平成15年度は50万トンを切り49万0499トンにまで減少し、8年連続して生産量は減少しました。

 特に、15年度は、業界の不祥事もあり大手食肉大手加工肉メーカーが、年末ギフトを自粛したことでの大きな減少となりました。

 また、斬減傾向にあった食肉加工品ではありますが、食肉消費の一端を担い、量的に拡大することから、品質的に大きく拡大していく傾向とはいまだなっていません。

 従来の価格訴求の食肉加工品から、品質重視の加工品に変化し、新しい需要を獲得しなくてはなりません。

 そのためには、従来の「素材型加工品」から「惣菜型料理提案加工品」へと「用途訴求」していく必要があります。業界でも数年前から、コンシュマーパックに調理例をカラフルに印刷し、食べ方を提案する。
商品名にダイレクトに「スープ、鍋、そのまま食べる、サラダ」等、の用途そのものを付ける。

 インストアーパックのロースハム・ベーコン・ウィンナー・焼き豚などに、食べ方例のレシピを書いたセールスプロモーションシールをトレイに貼って売り場に陳列する。そのレシピは季節によって絶えず交換する。

 などの努力はされて来ているので、素材として販売するのではなく、料理提案で食肉加工品を販促することで新しい需要を創造することができます。

 そうすれば、まだまだ食肉加工品の消費量は増えるはずです。

食肉加工品生産量の推移
  6年 前年比 7年 前年比 8年 前年比
ハム類 127,685 104.1 131,461 103.0 125,646 95.6
うちロースハム 87,956 105.9 91,563 104.1 88,654 96.8
うちラックスハム 1,550 112.4 2,261 145.9 2,684 118.7
プレスハム 39,843 92.7 35,601 89.4 32,336 90.8
ベーコン 76,597 99.0 61,716 98.8 78,313 103.7
ソーセージ 303,946 100.4 310,058 102.0 307,961 99.3
うちウィンナーソーセージ 192,233 103.1 201,426 104.8 198,165 98.4
うちドライソーセージ 7,475 99.7 7,033 84.1 6,101 86.7
合計 548,090 100.4 553,771 101.0 544,258 98.3

9年 前年比 10年 前年比 11年 前年比 12年 前年比
121,539 96.7 123,607 101.7 124,370 100.6 124,222 99.9
85,187 96.1 86,850 102.0 87,044 100.2 87,606 100.6
2,850 106.2 4,459 156.5 5,175 116.0 6,165 119.1
30,668 103.8 28,914 94.3 28,347 98.0 25,807 91.0
78,304 100.0 78,074 98.4 76,517 98.0 77,768 101.6
300,481 97.6 297,327 99.0 292,877 98.5 292,606 99.9
189,428 95.6 191,037 100.8 194,177 101.6 196,059 101.0
6,045 86.7 6,063 100.3 5,804 95.7 5,664 97.6
530,944 97.6 527,924 100.1 522,113 103.4 520,403 99.7

13年 前年比 14年 前年比 15年 前年比
120,174 96.7 110.623 92.1 108,676 98.2
86,657 99.1 81,890 94.3 78,625 96.0
6,030 97.8 5,306 88.0 5,738 108.2
26,135 101.3 28,439 108.8 28,947 98.2
75,841 97.5 74,711 98.5 70,494 94.4
296,929 101.5 289,187 97.4 282,382 97.6
200,208 97.5 201,089 100.4 197,222 98.1
5,325 94.0 5,093 95.6 5,865 115.2
519,078 99.7 503,009 96.9 490,499 97.5
単位:トン、%

食肉加工品は健康食品
 豚肉消費が定着したのは、豚肉といえば、疲労回復や物忘れの改善に効果がある「ビタミンB1」を多く含むビタミンB群が豊富な食材であるということが、広く消費者に認知されたことも大きな要因です。

「食育」のイメージで、食べて心体ともに健康になると言う意識は広くいきわたっています。
食肉加工品も、加工することで豚肉以上にアミノ酸が豊富になり体に良い食品であると言うアピールをすることが必要です。

 むしろ、食肉加工品には、食品添加物が多く使用されており危険な食品と言う誤解のイメージも残っていることは事実です。

 食品添加物としては以下の3つが使用されています。
1.リン酸塩(Na) ・肉の水分が流出するのを防ぐ
・肉と肉との結着性を高める
2.酸化防止剤(V.C) ・肉の酸化による味の劣化を防ぐ
3. 発色剤(亜硝酸Na ・肉の色を美しく保つ
・食中毒などの発育を抑制御

 これらの食品添加物の量は、食品衛生法によって、その基準値が定められているが、食肉加工品に使われている添加物の量は、実は、その値を大きく下回っていることが多いのです。

 従って、それらの情報を正しく消費者に伝える努力が必要です。

 豚肉をハムに加工すると、豚肉の疲労や脳の疲労を解消してくれるバリンなどの体力アップアミノ酸が平均で2.4倍になり、ダイエットの味方、脂肪燃焼アミノ酸も同じく2.4倍に増加していたのです。

 さらに、アミノ酸よりも身体に吸収されやすく、近年、世界の医学会が注目する成分、ペプチド。こちらも10%増加していたのです。特に、豚肉に含まれるペプチドはコレステロール値低下作用やアルコール分解作用をもち、最新研究では血栓をできにくくするという効果も見つけられました。つまり、ハムは加工されることで数段パワーアップする食品なのです(日本獣医畜産大学 食品科学科食品化学教室 教授・農学博士 沖谷明紘、発掘!!あるある 大辞典334回 ハムより)

「生ハム」で攻める新しい食卓提案
生ハムは料理用途が広がる健康食品
世界三大ハムと言われるのは、
1.イタリアのプロシュート・ディ・パルマ
2.スペインのハモンセラーノ
3.中国の金華ハム

で、全て生ハムです。

 生ハムにはイタリアタイプとドイツタイプがあり、一般的に生ハムは加熱をしていないで作る非加熱のハムでイタリアやスペインのハムは発酵製品で煙はかけません。

 日本はドイツタイプで塩蔵・熟成・乾燥の工程で、熟成の前に低温で「燻煙」するので日本の「生ハム」は「ラックスハム(ラックスシンケン)」になります。

 これは、日本の気候風土や、日本の品質基準が厳しいために低温で「燻煙」しなくてはなりませんが、「熟成」には通常の食肉加工品よりはかなり長い期間を要していますので、深い味わいを楽しめます。

 長期間熟成した生ハムでは、総遊離アミノ酸量が生の豚肉に比べて、一年熟成で約30倍に、2年熟成で約50倍に増えることが分かりました。」(帯広畜産大学 畜肉保存学研究室 三上正幸)

 三上教授が行った研究によると、長期間熟成させた生ハムは、生の豚肉に比べ、アミノ酸が平均して30倍以上アップしていたというのです。その値は、普通のハムと比べてみても、12倍以上に生ハムは、普通のハムより熟成期間が長い事で、それだけ多くのたんぱく質がアミノ酸に分解され、その量が、劇的に増えていたという事です。

 また、「メロンなどの果物に多く含まれるカリウムは、生ハムの塩分を排せつする働きがある」ので生ハムは果物と食べる健康食品ともいえます。

 従って、生ハムは高級なオードブルばかりでなくサラダやデザートとして新しいカテドリーのトッピングや、栄養補助のプラスアルファーとしても用途が広がるカテゴリーといえます。

「生ハム」の生産量の伸びはこれから
 食肉加工品としての「生ハム」の生産量は、全体が漸減傾向の中で16年10月までが5、051トン(前年比111.6%)で、16年度の生産量は過去最高を記録する勢いで伸びています。

 平成 6年と比較すると何と4倍に伸びているマーケットといえます。

 これは、イタリアタイプの保存食として長期間乾燥させた「生ハム」は、高級オードブル材料として使用されたものから、日本の手軽に食べられる、普段の食材としての「生ハム」にマーケットボリュームが増加していく段階にあると言えます。

 また「生ハム」の原料は「ロイン」が主力であったものが、「バラ部位」などに「生ハム」河口が広がったことにも要因があります。

「パンチェッタ」など「バラ部位」で作る「生ハム」が「濃くのある風味」で人気を得て、ピッツァやサラダのトッピング。チョット贅沢な焼きベーコン、スープやシチューの隠し味などにも広く使われる機会が増えた効果にもよるものです。

 つまり、これからの使い方次第で市場が大きく伸びる可能性があると言えます。

「食のシーン」創造で需要を掘り起こす
 夕食のオードブルやデザートとしての「生ハム」から、ロイン系部位で作る朝食時の「サラダ材料」、バラ部位で作る「濃くのある味わいの炒め材料」として朝食でのシーンで使われる「生ハム」需要も拡大傾向にある。

 生ハムのボリュームゾーンの価格も100g300円から400円を中心に推移したおかげで「普段の食事」のシーンに「生ハム」が出てくるようになった。

 サラダ・フルーツとのシーンばかりで無く、ピッツァ・パスタ、野菜巻きなど、手軽に多くの食材とクロスして食べられているます。

 朝食を含め、新しい食べ方提案で市場を掘り起こせる可能性があると言えます。

食シーンのアプローチで登場頻度をふやす「ドライソーセージ」
 ドライソーセージの生産量は平成14年に5,093トンと底を打ち、15年度5,865トン(前年115.2%)で、平成16年度は10月までの生産量が4,816トンと前年度103.6%の生産量です。

 ドライソーセージは、「生ハム」や「テリーヌ」などの新しい商品群や、こだわり商品のカテゴリーとして展開することで、新しい需要を作ることが出来ます。


 サラミソーセージは、加熱せず乾燥させてつくるもので、そのまま切って、お酒のおつまみやオードブルに食べられると言うのが一般的です。


 最近は、肉の挽き方(細挽き、中挽き、粗挽き)や、大きさ、用いられる材料のちがいによって異なった製品が作られており、古典的な深みのある風味のものから、ぴりっと辛い味、あるいはスモーク味のものまで、バラエティーゆたかなドライソーセージが作られています。

 材料も、牛肉、牛肉と豚肉の混合、鶏肉を混ぜて柔らかい味付けにしたものなど。
形状も、太いもの、細いものなど。

 サイズも、ヒトクチサイズ、スライス済みのものなど。
と、ドライソーセージには多くのバリエーションが近年加えられて、品揃えが豊富になってきています。


 陳列場所も、非冷蔵で販売でき、工夫次第で何処にでも陳列できるので、アルコール売り場・チーズなどの乳製品・フルーツコーナー・オードブルとして惣菜売り場・トッピング材料としてピッツァコーナー・レジエンド、などでクロス販売がしやすく、陳列が簡単に出来るので工夫次第で売上を作ることが出来ます。


 また、定番としての「ドライコーナー」を設置することで、材料やバラエティーな形状の違いによって売り場演出で、新しいお客様にアプローチしやすくなります。

「生ハム」で作る新食スタイル提案
 食マップデーターによる「食卓機会別 食卓出現数(TI値)推移」によると、「生ハム」は夕食に多く食されているが、2003年の6月から10月では、「朝食」のほうに多く出現していることがわかる。(グラフ A 参照)

 また、年々「朝食」での「生ハム」の出現回数が増加しています。


 このことは、朝食の中で、サラダのトッピングとして「生」で食べることや、トーストにチーズと一緒にトッピングして食べる、「炒めて」食べる、などの新しい食べ方が普及してきているからです。

 従って、「朝食メニュー」における新しい「生ハム」での「食シーン」の提案強化が、朝食メニュー強化にもつながります。


 また、「生ハム」を「何と食べているか?」という分析では、(グラフ B 参照)
「レタス」・「キュウリ」と食べていると言う回答が最も多く、「バラエティー食パン・イギリスパン」と一緒に登場している回数が増加しています(2002年10.9から2003年18.7)。

 また、「クリームチーズ」と一緒に登場している回数も、「6.1」から「20.1」へと大幅に伸びています。


 つまり、パンやチーズとの登場が増えており、パンやチーズとのクロスMDでの提案による販売がこれからは効果があると言うことになります。


 これからは、「生ハム」のマーケットボリュームが拡大していく傾向があることで、「生ハム」のカテゴリーの拡大をしなくてはなりません。


 プリマハムが提案する、従来の「生ハム」プラス、「フレイバーの広がり(スモーク・ペッパー・ベーコン)」 によるフレイバーごとのメニュー提案で、新しい食のスタイルが提案できます。

 メニューレシピを活用し、クロス販売などでメニュー提案を積極的にお客様にすることがポイントです。

食シーンが拡大し、登場回数が増加しているドライソーセージ
 ドライソーセージが他の食肉加工品と大きく違うところは、常温保存が長期間可能でアウトドアーにも、家庭でのおつまみの保存用としても有利な点が多いということです。


 最近のドライソーセージの登場シーンでは、夕食に多く登場しますが、「朝食」にも多く登場してきています。
これは、朝食のサラダなどに、今までに無い食感と、美味しさ・充足感を与えてくれるからです。


 朝食での登場も、販促方法で増やすことができます。


 また、「食マップ」での「夕食 サラミ同時出現推移TI値(アルコール)」 では、02年・03年とビールよりも「焼酎」とでの登場回数が多いことがわかります(グラフ C 参照)
ドライソーセージは、従来のビール・ウィスキーに加え、「焼酎」とのマッチングが増えている。と、言うことです。


 従って、「焼酎」とのクロスMD提案で新しい食シーンを演出できると言えます。


 また、他の「おつまみ」の登場回数が下降傾向にある中で、「サラミ」登場回数は増加しています(グラフ D 参照)
 これは、ドライソーセージは、年間を通じて食卓に登場していると言うことで、販売提案が非常にしやすい商品であるともいえます。

 陳列場所も限られず、関連での販売もしやすく、通年での販促を組めるという点で積極的にお客様にアプローチすれば効果が絶大と言えます。